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zoom RSS NOTボーナス ガンパレードオーケストラ白の章(29)

<<   作成日時 : 2006/02/22 15:13   >>

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 小島空という人物は悪い人物である。語る言葉の全てが慈悲と愛にあふれていても、なにもかもに挑みかかるような目がそれを全否定しているからであった。

 空と言う人物の目は、世界を征服する目をしている。かつてこの瞳を受け継いだ娘が、一人だけいた。空はその娘を一瞬だけ思い出したが、元が猫の同類なので、すぐ忘れた。本物の肉食獣の類は育った子供には興味を示さない。

 横山を抱いて足早に去る谷口を追って走り出そうとする咲良の肩を抱いてそれを許さず、空は咲良に顔を寄せてその目線にあわせて同じ方向を見ながら、口を開いた。
声だけは、ひどく甘く、優しい。

「待ちなさい。咲良」
「でも先生」
 肩を抱かれていても咲良の赤い目は、谷口を追おうとまだ動いている。
「なんだ?」
 この可哀想な娘を世界一の幸せな娘にしようと、空は思いながら言った。これは、そういうゲームだと。
地上の傲慢を一心に集めた空の瞳は、それを邪魔するものは全部敵だと雄弁に語っている。語るだけではない、実際に戦いもするだろう。物事の解決手段としての暴力をまったく否定しないのがこの人物とそれに連なる一族の特徴である。

わめきつかれたか、頬を膨らませた鈴木と、護衛の佐藤が並んで姿を消した。瞬間移動だなと考える空。そしてすぐに忘れた。航が横山だか谷口だかを追って家を飛び出した。

意識をかわいい咲良に集中する。
咲良の細い膝が、震えている。
「め、命令違反の匂いがする。谷口には命令違反の疑いがあるんだ」
「どんな命令?」
「分らない。でも調べなきゃいけない」
 横山を抱いた時に見せた谷口の表情が、咲良は嫌だった。脳裏で何度も映像が再生される。気分が悪くなる。
 空はその気持ちを分った上で、優しく言った。
「駄目だ」
 ショックで声もでず、なんでと口だけ動かす咲良に、空は口元だけを笑わせて言った。
「いいかい咲良。人間には賭けをしなければならない時がある」
「先生、賭けって、なあに?」
 尋ねる咲良は、目を何度もしばたかせている。上を見た。
そんなことを無視して耳元で優しく言う空。
「自分ではどうしようもないことに、身をゆだねることだ。今、咲良は賭けをしなければならない」
「どうして賭けをしなければならないの」
「お前が無力だからだよ。咲良。お前には好きなことを好きにする実力がない。俺は谷口という男を試す。戻ってくるならよし、戻ってこないならそれまでだ。あきらめろ。お前はそれを拒否できない。だから待て」
「でも先生、私は……私は嫌なの」
「ならば戦術を覚えるんだ。もっと可愛らしく、もっと強くなれ。欲しいものは自分で手に入れろ、そしてこれを最後に、決して施してもらおうなどと思うな。それが掟だ」
「掟ってなに?」

 空は肩が揺れる咲良に言った。静かに、だが熱く。
「俺の掟だ。咲良。俺の子は誇り高く死ぬべきだ。たとえ俺からでも施しを受けるな。そなたが請うのではない。万民がそなたに請うのだ。誰が相手でも一歩も退くな。誰も請うことがなければ自分でやれ。それが我らの生き方だ。俺が与えるのは愛と、戦う技だけ。それで満足せよ。そなたが俺の子ならそう生きるのだ、誰の許しも要らぬ、誰の前にも跪かぬ、正義を奉じ万民の慈悲をまとって戦え、負けは一度だけ、人生の最後にだ。それ以外の生き方は他人にさせろ。……だから待ちなさい咲良。これが最良の手ではないが、今追えばお前の負けだ。お前は谷口に負ける」
「意味不明。谷口は部下だから……勝敗は関係ない」
「谷口はそう思わない」
「……ま、負けてもいい」
 咲良は震えて、一番簡単な結論を口に出した。空の返答も簡単だった。空は優しく言った。
「その時は俺がお前の首をへし折って殺してやる。負ける子はいらんのだ。咲良」
咲良はぽろぽろ泣いた。
「先生は、先生は……ひどい人だ」
「そうだ」
 空はどんな悪い奴よりも軽く笑って言った。
「だが俺は俺の子の運を信じている。俺のところに来ただけでいくつもの奇跡を潜り抜けてきたのだ、後何度かは、その奇跡も続こうよ」

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