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zoom RSS BALLS ボーナス クリサリスの休日(前編)

<<   作成日時 : 2006/02/21 22:20   >>

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 白い帽子が、風に揺れている。
帽子の主は天を見上げると、青空に白線を引く対潜哨戒機を眺め、そしてやれやれと言った。
 隣でBALLS達が、くるくる回っている。

クリサリス・ミルヒことクルスは今、休暇中である。

遠くからお父さん、お父さーんと声をかける恵に、誰も見ていないので少しだけ手を振り、そして、帽子を取って太陽を浴びた。

地球と比べると小さくて遠い太陽は、だからこそ、とてもいとおしく思える。

「釣りは嫌いか、武勇の友よ」
 環境適応スーツから器用に首を動かして、バンドウイルカ知類のポイポイダーが声を掛けた。釣竿を持ち、釣り糸をたれている。

「いや」
 いつ見てもシュールだと思うクルス。帽子をかぶりなおす。
シュールだと思いながら、どこか面白く、どこか肩を組んで笑いたくなるのが、この世界のいいところだった。おかげでクルスは、ついついこの世界で長居をしている。

もっとも、イルカにぱっと見で分かる肩はない。

 それが面白く、口の橋だけを笑わせていると、隣で全然戦果、とういうか釣果のない小カトーがわめき、ひっくりかえって空を見上げた。

「降参か」

クルスが言うと小カトーは顔をゆがめて手足をばたばたさせてこんなん勝負じゃねえよと、言った。ふてくされて起き上がる。実はこれでいて小カトー、クルスを敬愛している。いつかあの帽子貰おうと思っているほどだった。
それで、もう一度釣り糸を垂れた。そもそもあの事件から口を聞かない”バーカ”エノラ(本人談話)に、口を開かせるには、なんか土産が必要だと、そう思っている。

アジだ。アジを釣ろう。どんな形か知らないけど。あれ? あれって深海魚だっけな。

「桃色の友は気が短い」
 ポイポイダーがイルカの口を開閉させながら言った。音声変換されて出てくる言葉は、低く、それでいて渋い。小カトーは背筋を伸ばして、先祖代々うちはそうなんだだと、返した。

クルスが昔を思い出して音もなく笑った。水面に揺れる釣り糸が、一際大きく揺れた。

「うー。なんか感じ悪いのー」
口先を尖らせる小カトー。クルスに頭をなでられて、ちょっと嬉しそうな顔をして、しまったという顔をする。
 気づけば恵がすごい勢いで走ってきて隣で正座しており、クルスは少し考えた後、恵の
頭もなでた。目を細めて嬉しそうな恵。
 微妙に嫌な予感がして横を見ればマイケルとスイトピーとウラル・カナンとノイ・アルトが物欲しそうな目で順番待ちしており、結局クルスは、順番に頭をなでることになった。

 この人物、こういうところが、妙に子供達に受けている。子供人気だけで言えば知恵者と二分する。子供の好きにも色々種類はあるようで、知恵者は子供達から悪口言われながら抱きつかれる系、クルスは皆が周りに集まって幸せそうにしている系といったところであった。
寡黙で猫先生くらいとしかしゃべらない男だったが、そんなことを、子供達は気にしていない。
だから水雷室はいつも数名の子供が遊びに来ており、クルスはたまに思い出したように、昔の話を聞かせてやっていた。

「ねえ、クルス」
 マイケルは首をかしげて尋ねる癖がある。クルスがうなずくと、マイケルは嬉しそうに笑って口を開いた。
「結婚しているんでしょ」
「ああ」
「どんな結婚生活?」

 クルスは黙って帽子をとると、マイケルに深くかぶせて上から叩いた。
うわーとか言いながら帽子に手を伸ばす小カトーとウラルの手をどかし、帽子をとって口を開くクルス。

「子供はそんなことを気にするな」
 マイケルはクルスに叩かれても、愛情表現くらいにしか思わない。思わないから、普通どおり口を開いた。
「でも、僕、大尉と結婚する予定だし。クルスの奥さんは背が低いんでしょ。参考になるような気がする」
 クルスがなんと答えようかと思っている間にスイトピーが冷静に言った。
「でも、ハリーはミカのこと、避けていますよね」
顔が赤くなるマイケル。スイトピーをにらむ。
「遠い未来の予定なんだ」
スイトピーが言い返す前に、笑ってみせるクルス。
「そうか、遠い未来ならどうなるか分からないな」
マイケルが嬉しそうに何度もうなづいた。

「じゃあ、少し話そうか」

クルスは潮風に髪を揺らすと、口を開いた。

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