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zoom RSS ネクストゲーム バレンタインプレゼント2 (谷口工藤)

<<   作成日時 : 2006/02/19 06:55   >>

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 谷口竜馬には漆黒の制服が良く似合う。
特別階級を示す赤い縁の入った同じ色のコートを纏い、そして歩いた。雪の中を。
その着こなしは一分の隙もなく、どこか間抜けな緑色のジャケットを着ていたのが、遠い昔の話のように思われた。

 遠目からもはっきり分かる、大柄で彫刻のように鍛え上げられた肉体をした、白い息を吐く、どこか悲しい瞳の男。

それが今の、谷口竜馬だった。彼が笑顔を見せるのは、今消え行こうという女にだけであり、程なく、墓の前だけになるだろう。

 その一歩後ろについて歩くのは工藤百華。目の覚めるような金髪の長い髪を黒衣に垂らした、絶世の美女である。 谷口との関係を誰もが噂したが、それを本人達に聞こえるほどの音量で言える人間は、もう彼女と、彼の周囲には残っていなかった。ただの一人も、例外なく。

工藤百華は美しい。それがあまりにも美しいゆえに男装をしているのが痛々しく見え、人は谷口を小走りで追う彼女の悲しい横顔を見て、涙した。

 雪の中を、二人の男女が歩いている。

谷口は目を伏せたまま口を開いた。手の指は無意識に、一房だけ貰った青い髪を編み上げた指輪に触れている。これがある限り、彼は絶対無敵の存在だった。
「航の行方は知れたか」
谷口の歩幅は大きい。小走りで口を開く工藤。
「岩崎が追っています。ほどなく分かります」
谷口は、振り返らず言った。
「岩崎に、降伏勧告するよう伝えてくれ」
「無理かと。……彼は幻獣共生派のガードナーです」
「……それでもだ」
「分かりました」

 夜半のうちに独断で部下を率い航が潜伏しているアジトに急襲しようと思う工藤。
彼女は、谷口が悲しい瞳をする全ての理由を憎んでいる。だから重病の治療というデマをてこに拡大する幻獣共生派に転んだ級友を、彼女は殺そうと思っていた。
 消え行こうという女も嫌い。だから、どんなに痛みをともなっても、長生きすればいいと思う。使い切れないモルヒネくらい、用意してやる。

 だから。と工藤は思う。
だからどうか、この人をこれ以上悲しませないでと。

 立ち止まることなく、竜馬は口を開いた。遠い昔の事を思い出したか、その言葉は、優しかった。
「寒くはないか」
「いえ。……お気遣い、ありがとうございます」
「息があがっている」
「気のせいです」
「そうか……」

 谷口はゆっくり歩くことを思い出した。それが急すぎて、工藤は谷口の広い背中に、顔をぶつけた。

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