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zoom RSS 昇天のレムーリア(1)

<<   作成日時 : 2006/02/16 17:37   >>

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 茨城雷蔵は旅行準備で忙しい。
大きなトランクに着替えを詰め、歯ブラシを積め、良狼の下着をつめ、猫のマグカップを積め、非常食を積め、毛布を探してこなきゃ、まだあったかな。

大きな白い犬のばうばう2は首に小さな旅行かばんをつけてもらって尻尾を振っている。
雷蔵用の帽子を、かぶっていた。

 部屋から顔を出して大声をあげる雷蔵。
「もー。良狼も手伝って! 自分の分くらいの着替えは自分で入れる!」

 奥のキッチンから甘い匂いがする。
前の廊下を、チビがはって横切っていった。

キッチンからの返事。
「ん。まあ。そのうちにな」
「そう言って今まで一度もやったことないくせに!」
凄い音がした方、顔を横に向ける雷蔵。
「こら、白馬! そんなことしていると”ばうばう”に食べられるぞ!」

 もうっと頬を膨らませてトランクの前に戻る雷蔵。
どうしようか考えて腕を組んで豪快に笑うOLの写真が入った額縁を外し、かわりに小さな裁縫道具を入れた。包帯と医薬品は最初に入れてある。

腕を組む雷蔵。すでにトランクから中身はあふれている。
それでも彼が選び、最後の最後にトランクに収めたのは、この間、みんなで旅行した際にペンギンがくれた、小さな銀の旗だった。

”正義最後の砦”

 そう書かれている。
これを張ればどんなところでも、それはささやかな反攻をはじめる目印になる予定であった。

「ほらー、もう僕の準備は出来たんだからねー!」
トランクの上に乗って、荷物を圧縮しながら声をあげる雷蔵。

返事がないので頬を膨らませ、3秒考えて立ち上がって相棒に文句を言いに行く。
大股、顎をあげて、でもスカートの中は秘密。

 奈穂がいない、ひさしぶりの二人だけの旅行。雷蔵はインフルなんとかという急性水虫で臥せっている昇にひそかに感謝しながら、厨房に立って何かやってる良狼に後ろから抱きついた。

「準備ー」
 額をおしつけて言う雷蔵に、眼鏡の良狼はどこか甘く、口を開いた。
「すぐやる」
 実は気のせいで匂いが甘いだけだったらイヤだなと思って顔をしかめる雷蔵。それで一生懸命、良狼の表情を伺おうとした。

 良狼は顔をしかめてチョコの温度管理をやっている。
構ってくれないので面白くない雷蔵。背伸びして抱きついて顔を並べた。

「こんな日になにやっているの?」

 良狼は鍋の火を調節する。
「チョコだ」
「なんでチョコなの?」
「2月14日にはチョコを人に贈る」

 雷蔵が編んだ長い髪を揺らしたので、良狼も、少し真似した。すごく嬉しくて笑う雷蔵。
良狼は温度計を見てあわててチョコに意識を集中する。
「なにがおかしい」
良狼の質問に雷蔵、湯煎で溶けたチョコを見ながら口を開いた。
「普通は女の子が男に贈るんだよ」

怪訝そうな顔をする良狼。
「お前のところではそうなのか?……俺の日本では……」
「日本では?」
「男が親しい女性に贈ることになっている」
「漢は?」
「そんなものはしらん」

 王族の勤めでもあったのか、恐ろしい手際の良さで型を並べていく良狼。
チョコビスケットも焼きあがっている。

ちょっと考えて、最高の笑顔になる雷蔵。
「ねえ、僕は?」

一旦エプロンを外しながら、良狼は言った。
「冗談を言ってないで、皿を並べておいてくれ」

頬を膨らませる雷蔵。目を細めて人差し指を深く舐めると、溶かしたチョコの中に指を突っ込んだ。

 小さく叫ぶ良狼をそ知らぬ顔で見て、舐める雷蔵。

「相棒を無視するからこんなことになるんだ」
「お前なあ」
「なんだよ。やる気か」

雷蔵は拗ねた口調でそう言った後、良狼が肩を落としたので笑い、自分の唇にチョコをつけて良狼に口付けした。

「ほら、これで共犯だろ」
「そういう冗談をやっていると、いつかふしだらと言われるぞ」

 舌を出して大きな瞳で雷蔵をにらむ良狼。
「相手選んでるからそういうのじゃないもーん」

大きな音、白馬が大泣きしてばうばう2が吼えたので、二人は顔を見合わせるとあわてて走り出した。

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