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zoom RSS NOTボーナス ガンパレードオーケストラ白の章(11)

<<   作成日時 : 2006/01/08 00:00   >>

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 一方その頃。
 除雪も十分でないハンガー前で、半分涙を浮かべて両手で持った板チョコをかじっているのは、横山亜美である。
しょげている谷口を思い出し、まったく、男らしくないと思った。

「谷口くんを追いかけなくていいのかい?」

 そう言って変なポーズで腰を振りながら背後に現れたのは灰色の髪も素敵な、黙っていればまず美男で通るが黙ってられない男、岩崎仲俊である。

 髪の毛を逆立てて振り返る横山、あわてすぎて雪の上に尻餅をついた。
地元民でも、結構やっちゃうミスである。

「な、岩崎!」
「そう、岩崎とは僕のことさぁ。泣いてるね。恋する乙女」
「だ、誰が恋する乙女ですか。体はそうでも私は武士です!ぶっとばします」

正座して頭を下げる岩崎。

「参りました」
「はやっ」

 笑って顔を上げる岩崎。顔はまことに、すがすがしい。
「僕は勝てない戦いはしない主義なんだよ。立てるかい?」
「あ、ありがとう……ございます」
 手を引かれて立ち上がる横山。いつのまにか悔し涙はとまっている。
手を離して、丹念に岩崎がついた手をコートに擦り付ける。横山は岩崎が苦手である。
というか、気を許せばすぐにこの男に騙されるに違いないと、確信めいて考えていた。
実際のところ、その確信はまったく間違いではない。その気になれば数秒で女性を舞い上がらせるのが岩崎の実力であった。

 もっとも、本人はそういう能力を友達に使うことはないと主張する。
どうかすると自分の能力を、嫌っているようでもあった。
横山の行動を見なかったことにし、にこやかに笑う岩崎。

「いやいや、僕ぁ友達くらいには幸せになって欲しいからね。でもいいのかい。本当に谷口くん追わないでも」

「な、なにが、ですか……?」
 身を硬くする横山。岩崎は僅かな情報で何でも見通してしまうことを、横山は知っている。嫌われてるなあと思いつつ、優しい笑顔の岩崎。

「谷口くんは隊長と仲良くなるんじゃないかな」
「ま、まさか」

 つい大声になってしまい、横山はあわてて自分の口を隠した。赤くなる。
笑って許す岩崎。岩崎の笑顔を崩すことは、谷口と腕相撲したり、航を笑わせたりするのよりも難しいとされていた。
 この日もそうだ、笑ったまま、丁寧に雪の上に落ちたチョコを拾って横山に渡した。

「洗えば食べれるんじゃないかな。今となっては貴重品だしねえ」
「……隊長でいつも谷口は胃が痛いって」
「それだけ心配しているんだろ? 隊長のことを」

 横山の心を黒い槍が一刺しした。恐がらせすぎないように、優しく笑う岩崎。

「いや、これはその僕の推測なんだけどね。でもまあ、その、心配なんだよ。谷口くんも横山さんも、僕にとっては友達だからね」
「わ、私は谷口とそんな関係では」

 優しく笑ってうなずく岩崎。この人物は谷口、航、横山と同じで部隊最古参組である。
「うん、知ってる。……でもまあ、なんだろうね。僕ぁそう……」
この人も谷口くんにも、幸せになって欲しいんだ。
「谷口くんと君がいっしょなら、いつでも遠慮せずに遊びにいけていいなって思ってるんだ」
「本気で言ってますね。岩崎」
「僕はいつでも本気だよ」
 嘘ばっかり言って、岩崎は目を細める。ひどく冷たい目。

「急いだがいい」

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