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zoom RSS 好評御礼ボーナス ガンパレードオーケストラ白の章外伝1(22)

<<   作成日時 : 2006/01/31 15:48   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

野口は涙を流していた。全裸で、ただ靴下だけを履いて。

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時は、1日前に戻る。

 将来を嘱望された漬けソックス職人野口直也は、サングラスを掛け、アタッシュケースを持って歩いている。

 検問の前を通り、荷物をあけて見せろといわれた。
慣れた手でアタッシュケースを開ける野口。

その中には土がぎっしりと詰まっている。
表情を変える憲兵達に、目元がサングラスで隠れた顔が、笑った。
「ああ、これは陸上競技につかうものでね。いい成績をあげるには、いい土が必要なんです」
熱っぽく語り始める野口。数分のうちに、いいから行けと言う指示が下りた。
少しばかり残念そうに口を動かし、アタッシュケースを畳んで歩き出す野口。

検問所から背を向けて20m。野口のサングラスが照らされた。

背後の爆発。

検問所が吹き飛んだ。

目元がサングラスで隠れた顔が、笑った。
「もう少し話していれば、何分かは寿命が延びたのにな」
また歩き出す。

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 偽りの才媛、工藤百華、16歳乙女は優しい笑顔を浮かべて、取り巻きたちと少しばかりの弁当を食べている。

 本当はがっつり食べてがはははと笑いところだが、実際は金欠で笑顔も弱々しいものであった。金がないことはつらいことだなあと、思う。

「あのね、それで谷口さん、恐くて……」
 一緒の席に座る吉田遥が妙に馴れ馴れしく、谷口の悪口を言うのが癇に障る。
勤務中に隠れてお菓子食っていればそりゃ怒鳴られるに決まっているだろうがと思う工藤。
だいたい友達なら俺にもお菓子寄越せ。

ハラヘリな弱々しい笑顔を見せて、口を開く。
「他人の悪口を言うと、自分の品性も落ちますよ?」
工藤が大好きな伯父さんの受け売りである。人の悪口を言う奴は性根が汚いんだよ。小さい頃の工藤も、そう思った。
その言葉のおかげで、工藤は今も、誰にも後ろ指さされずに生きている。
それでも時々、こんな時には伯父さんの教えを破りそうで、工藤はそれが、つらかった。
綺麗に生きたいよなあと、思っていた。

 一緒に食事する菅原が身を乗り出してきて喋り出す。嬉しそう。
「そーそー。そーなのよぉ、遥ぁ。だいたい、石田が悪いのよ。ナニよね。アイツ、何かって言うとすぐ懲罰だ、谷口ぃって、頭足りないよね、絶対」
 想像の中で派手に菅原をひっぱたく工藤。女って奴はクズだと思う。
腹が立つ。傷の舐めあいが嫌いであの赤い目の隊長さんと親しく話したことはない。だが、きっとあの娘は、想像を絶する悲惨な目にあったことは間違いない。それでも一生懸命生きているじゃないか、本当に一生懸命生きているじゃないか。それだけで絶賛されていいんじゃないかと思っている。

菅原のバカ面を眺め、工藤は悲しく微笑んだ。なんでこんなところいるんだろうなあ。俺。
食事する気が、失せた。飯がまずい。箸を置いた。
 菅原が口を開いた。
「あれ?どうしたの百華ぁ」
「もうお腹一杯なんです」

はぁと、妙な感心の仕方をする菅原。
「食べないよねえ、百華は」
「いつも、一杯食べたいと思っているんですけどね」
工藤はそう笑ってご馳走様と心から食い物に感謝し、席を立つ。
本当なら意地でも食ってやりたいと思ったが、最近は中々、そうさせてもらえない。

 胃の中のものが腐りそうだ。嫌だ嫌だと思う。
嫌だ嫌だと思うとき、せめてまっすぐ歩こうとするのが工藤の癖である。
少し両手を広げて、まっすぐ歩いた。

あいた。

廊下でぶつかる。

「ああ、ごめん」
 サングラスをかけた、野口だった。
自分でもあんまり高くないことを気にしている鼻を押さえて、ごめんなさいと言う工藤。
野口は上辺だけの笑顔を浮かべて、歩いていく。
失礼な人と思いながら、あれ、火薬の匂いがしたと思う。
顔を上げて野口が歩いていった方を見ると、遥か遠くで佇む野口が、サングラスをとって工藤を射抜くように見ていた。

 咄嗟に頭を下げる工藤。何も言わずに歩いていく野口。

工藤は、この時深くは考えなかった。
廊下の切れるところから、たまに見えた太陽に目を奪われたのである。
工藤は渡り廊下から外に出て目立たないが居心地のいい陽だまりをみつけてしゃがみこむと、弁当の残りを手に取り鳥達がやってくるのを待った。
餌をついばみに来る鳥達を見て、やっと本当に微笑んだ。


 心の中で谷口を弁護する。どんな悪党も震え上がるであろう工藤の、個人所有である心の中の法廷においては、まだ谷口は弁護が足りてない。
 女子からは声がでかくて恐いとか筋肉が気持ち悪いとかモミアゲが長いとか小娘に振り回されているとか散々な評価を下されている谷口だが、工藤の谷口評価は、満点に近い。何より信義を重んじる。そこがいいと思っている。
約束を守る奴は大した奴だ。大好きな伯父さんの口癖である。幼い工藤も、まったくだと思った。今ならなおのことそう思う。これから歳をとれば、もっとそうだと思う。
だから、満点だ。人間って奴は欠点の塊だ、一個でもいいところがあれば満点だと、思う。

 そうしてゆっくりゆっくり手を伸ばし、手に止まった小鳥の背をなでて、ああ、はじめてなでることが出来た……あんな奴を、友にしたら人生は楽しかろうと、そう思って微笑んだ。小鳥も、ちょっと鳴いてそうだと言った。

人の本性は笑った時の眼差しに出る。谷口が咲良や航に向けた時の笑顔は誰かの為に進んで死ぬ目だと思った。約束を守って心優しい。完璧じゃないか。谷口が金持ちだったら全力で篭絡にかかっていたろう。

残念だ。本当に残念で仕方ない。上4人姉で末っ子で親はサラリーマン。それさえなかったらなあ。

寂しく笑う工藤。知らない間に鳥達がどんどん集まってくる。

まあ、いいか。赤い目の隊長が、あの人のお似合い。あの人とったら、きっと隊長、泣いちゃうわよね。
工藤はそう思うと、昼休みを終えて教室に戻ることにした。

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