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zoom RSS NOTボーナス ガンパレードオーケストラ白の章(21)

<<   作成日時 : 2006/01/28 23:36   >>

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 ドアを開けた谷口と小島航が見たものは、布団と毛布をかぶって隠れている、石田咲良である。

 壁の向こうの大きな谷口の声を聞いて、自分が何をやっているか意味も分からず、隠蔽姿勢をとったのだった。

それは野外で、上から雪でもかぶっていれば完璧だったかも知れないが、部屋の中では、単に隅っこで青い頭まで毛布かぶってチョップされないように両手で頭をおさえているだけにしか見えなかった。
わずかに谷口だけが、隠れようとしていたなと分かっただけである。

 大股で毛布のところまで歩き、問答無用で毛布を引き剥がす谷口。
血の匂いや吐いた後の匂いはなく、ただ淡い女の匂いが部屋にあっただけだから、怪我がないことはすぐに知れた。

子供の頃の航のお下がりが、小さすぎるように見える動物柄の赤いパジャマを着た咲良が、髪を盛大に乱して、匍匐していた。谷口に身を起こされる。
腕の中で、赤い目を思いっきりつぶる咲良。額に触られて目を恐る恐る、開けた。

 熱はない。低すぎることもない。重傷ではないと事実を確認した谷口の腹の底から、怒りが湧き上がった。恐い谷口の表情を見てやっぱり犬は猫が嫌いだったと思う咲良。

怒鳴りつけてやろうかと思ったが、谷口は、不意に出た自分の涙で怒鳴りつけるチャンスを無くした。

怒鳴りつけるかわりにやったのは、乱れすぎた青い髪を太い指で傷つけないように恐る恐る触れて、あまり心配させないでくださいと、聞こえるか聞こえないかの声量で言っただけである。

 隣で、緊張ではすまない面持ちの小島航が、長い息を吐いて膝をついた。
「誤報か」
 肩を落とす谷口。
「そうだな。すまんことをした」
 谷口の心配を喜んで、笑って肩を叩く航。自分が溺愛すると言って良い咲良が他の者からも心配されているというのは、吹き飛んだ戸を思っても気分が良かった。

気を落とすなと言う代わりに
「救急車を呼ぶか軍の野戦病院を使うか、本気で迷ったよ」
と言った。立ち上がり、パンを拾いに戻る。竜馬の分まで考えると量が少ないなと思う航。


 昨日と違って、谷口がじっと自分を見つめるのが、咲良は嬉しかった。
行方不明だった大きな犬の話が戻ってきた気分。
「谷口」
「なんですか」
「谷口は大きな犬に似ている。先生に借りた本に出てくる犬と一致率が26%あった」
 咲良が元気なら、大きな犬でも別に良かった。谷口はそれは発見でしたなと言って、ボタンのかけ方がなってないパジャマから目をそらした。
もみ上げを引っ張られる。咲良は谷口が目をそららすことを許さない。

つとめて咲良の顔だけ見ようとする谷口。自己診断を重傷から軽傷に引き上げる咲良。
いつもの調子が、戻ってくる。分からないこと、どうにかすること。
「谷口」
「……はい」
「心配って、なあに?」
 谷口は口を開いた。
「貴方のことを思っているということです」

 考える咲良。よく分からない。また重傷になりそう。
気分が悪くて、でも知りたくて、口を開いた。
「犬と猫みたいに? それとも犬と犬みたいに?」
「なんですかそれは」

 谷口は大きな犬としての自覚が足りないのかもしれないと思う咲良。
考えて、一番平易な表現を口にした。
「心配は仲が悪いから思うの?それとも仲が良いから思うの?」
「悪いなら心配しません。貴方はどうか知らないが、自分は……」
「自分は?」

言うに事欠いた谷口は咲良の頭を軽くチョップした。
遅れて頭を守る咲良。

「ほら、自分達は外で待っているので着替えてください」
「でも私は重傷なんだ」
「……また心配させる気ですか」

 咲良が音もなく何度もうなずくと、谷口は顔を赤らめて、重傷にならないでも心配しますと、言った。

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