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zoom RSS NOTボーナストラック(6) Aの魔法陣ver3ファンタジー

<<   作成日時 : 2006/01/02 01:23   >>

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 ”いじわるめがね”は、裸を見られても平然としている。
まったく、気にしている風がない。
それは彼の場合、恥ずべきは己の身体ではなく、己の行いだからであった。
実際のところ、それだけが恥ずかしくなければ、後はどうでもいいと教育を受けている。

 己が恥ずべき行いをしてないなら、何が起きても、何があっても、彼は恥じ入ることはない。
これが立てた約束を守れないのであれば、彼は顔を真っ赤にして下を向いているところであろう。つまりは”いじわるめがね”は、そういう人物である。

この点、普段がさつを装う海美が顔をあげて”いじわるめがね”を見れない状態で正座しているのと好対照をなしている。

お茶を持ってきますと、坂東陸が言って席を立った。遠ざかる足音。

 長い沈黙の時間。

”いじわるめがね”は沈黙に馴れている。泰然と座り、行儀良く控える猫達を見ている。
一方海美は、沈黙が、すごく怖い性質だった。帰り道一人のときは歌を歌って帰るほどだ。
すでにしてもう喉がからからに渇いており、良からぬことをぐるぐると考えている。たとえばそう、”いじわるめがね”が明日から数日口を聞いてくれないとかだ。

そんないじわるされたら、学校行きたくなくなる。そんなの嫌だ。

一生懸命頭の中の亀さん象さん達を追い出し、茶碗を両手で強く握って震えをとめようとし、深呼吸して口を開く海美。なるべく関係ない話題を必死に探す。逃げるように目をあちこちに向けた。

「この、古い版画はなに?」

 良い話題だと猫達が深くうなずくのを、気分的でそれどころでない海美は、見逃した。
子供部屋にはいささか不釣合いな屏風がおかれていた。

そこには長い錦絵が張られている。鳥獣戯画にもどことなく似ている、ヘンな絵。
ゲームに出てくるようなドラゴンを先頭に、多くの生き物が船に乗って桜の咲く島に流れ着いている。
 そこで雲のたなびく教科書で見たような、赤い絨毯の、そう、えっけんのまでドラゴンと猫がならんで優しそうな人の前に立っている。
 燕尾服姿の昔の千円札に出てそうな人が盆の上にのった何かを渡そうと近づいている。

次にはドラゴンといろいろな生き物が桜の咲く国で家を建て、畑を作って円になって踊っている。これから、長い長い祭りをはじめるそのように。

海美が顔を向けると、”いじわるめがね”の横顔が見える。その瞳を直視すれば二度と目が離せなくなるという噂の色の瞳が、眼鏡の隙間から見えた。どんな青よりも青らしい青。

 猫達が一斉に前足を叩いたのを、見惚れていてそれどころでない海美は、見逃した。
元斉一郎が口を開くのが見える。

”長い夜が 昼を分けるのは”
”人の心が二つあるため”
”夏の終わりに秋が来るのは”
”冬の終わりに春が来るため”
”巡り 再び 繋がる 回る”
”全てを無くしたときに生まれ出る”
”その剣の名は豪華絢爛”

 猫達が涙を流した。元斉一郎は眼鏡を取り、雫をぬぐった。
海美が見慣れたはずの少年の横顔の美しさに息を止めている間に、元斉一郎は眼鏡をつけて、”いじわるめがね”になる。そして何もかも、元通り。

”いじわるめがね”は、口を開く。
「そういうものだよ。分かった?」
「え、ええと。ああ、うん。何となく」
 限度を越えると痛みが消えるように、感銘が過ぎると、顔も熱くなくなるものらしい。
海美は意味も分からずうなずくと、ひどく居心地の悪い感じになった。
自分のおしゃれが、おしゃれでない気がした。それで、ちょっと落ち込む。

お茶を持って戻ってきた坂東陸はため息一つ。
罰が過ぎますと”いじわるめがね”に目で訴え、うみちゃん、お茶だよと言った。

我に返って茶碗を震わせながら茶を飲む海美。
盆を抱いて待つ陸。
礼儀にのっとり、客人である海美が茶を飲むのを見届ける”いじわるめがね”。

「みんななんで飲まないの?」

 礼儀になってないと言おうとする”いじわるめがね”を勢いあまって押し倒しながら陸はあわてて口を開いた。乱れた髪から見える尖り気味の耳が上下に揺れている。
「わ、私はさっき飲んだから」
四つんばいになって言う陸。呆然とする海美。口を開く。
「え、いや……」

海美を見て、下を見る陸。
「へっ。えっ、あっ……」
”いじわるめがね”の顔にかかる金の髪をどかし、またがった身体をどかしてごめんなさいごめんなさいと言う陸。

憮然とした表情で身体を起こす”いじわるめがね”
今日喧嘩で同じことをしたときは平然とした表情だった、そのわずかな表情の違いに猛烈な競争心を燃やして座りなおした”いじわるめがね”を押し倒す海美。尖り気味の耳を逆立てる陸。

「胸か、胸の差か!」
 平然と眼鏡を指で押す”いじわるめがね”。
「意味が分からない」
「じゃあ背か!」
「さらに意味が分からない」
「い、いいから表情変えろぉ!」
 いつもの感じが戻ってくる海美。とてもとても情けないが、こうしている間だけは、”いじわるめがね”が遠い存在じゃないような気がした。

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