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zoom RSS 売り上げ好調ボーナストラック ガンパレードオーケストラ白の章(20)

<<   作成日時 : 2006/01/27 15:44   >>

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 あちこちで騒ぎが起きている。
谷口は6階から飛び降りる際に中隊の全部に実弾装備での訓練集結を即時に発行しており、この連絡を受けて部隊の人員は一斉に駆け出すことになった。
なお、訓練集結は谷口が出すことが出来る権限で一番実戦に近い形態である。このまま敵が見えれば自衛の名の下に砲火を開けた。

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 連絡を受けて一番早く動いたのは、岩崎である。
彼はその日、黄色いジャンパーを来た男と妙に元気な青黒い制服の女を追って青森市内を動き回っていたが、後少しというところで谷口の連絡を受けることになった。

 怒りを秘めた冷たい表情で背を向けて歩き出す。走る。
最近、得体の知れない事件が多すぎる。芝村がこんな土地でもうごめいているのが見える。

人類同士で何故くだらない争いをする。

 家の前に滑り込み、息を整え、ノックする岩崎。
表情を明るく楽しそうに豹変させる。

眠そうな竹内が出てきた。
「やあ、竹内くん。僕が迎えに来たよ。急いだがいいね」
「訓練ですからね」

 目をこする竹内に、微笑む岩崎。
「そうだといいんだけどね」

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 竹内運転する自転車で岩崎が全速で学校にたどり着いて、きっかり2分の段階で寝巻きに顔パック姿の工藤百華が走りこんで来た。頭を妙に押さえていて、制服は丸めて脇に挟んである。


「工藤さん!?」
竹内の素っ頓狂な声をあげる顔面を拳で殴り飛ばし、後ろを向いて!と命令する工藤。
岩崎が背を向けると工藤は着替えを開始する。

「どういうこと?」
 寝巻きを投げ捨てスカートのホックを取り付けながら口を開く工藤百華。ウイッグのずれを修正する。

この人物だけは良く分からないなあと思いつつ、背を向けたまま口を開く岩崎。

「谷口くんが集めているね」
「それくらい、分ってますわ」

 髪をかきあげる工藤、ちょっと面白くない。上着を着て、靴を履き替える。

「私が気にしているのは、何があったか、よ」
岩崎は竹内が起き上がって着替えを覗いたりしないように、竹内の後頭部を蹴り上げながら口を開いた。
「谷口君は渡部さんが家業を手伝っているのを知っているから早朝に訓練なんかはしないね。だからそれ以外だ」
「緊急事態くらいは分っているわよ。……もうっ、狐さんと武器を早く!」
「村田さんが保管庫の鍵を持ってる。もう少しだ。野口くんとならんで走っている。それより」
「なに?」
「顔パック、みんなが来る前にとっておいたほうがいいんじゃないかな」

 岩崎は背中から蹴倒された。顔を真っ赤にしてどうやってどこ見ていたのよと叫ぶ工藤。

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一方その頃。

横山の前で背中が裂けた割烹着を着た谷口が、前髪を下ろした谷口がゆっくり立ち上がった。練習試合で谷口を前にする時と違う桁違いの威圧感に、横山は思わず失禁しそうになる。

「横山、どけ」

横山が恐怖で動けないとなると、谷口は何も言わずに横山を抱き上げて横に置き直して前へ進んだ。本気になった谷口に迂回はない。あるのは谷口以外の譲歩である。
古い横開きの戸を一瞥してパンチ一発で戸ごと吹き飛ばし、隊長と叫んで家の中へ進入する。

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 小島の家には生活がない。
家主である小島空は夜になると執筆活動に集中して、なんの生活活動も、やっていない。掃除も料理もしておらず、ただ定期的に、ゴミだけを捨てた。規定の場所から外れているものはなんでもゴミとして捨てていたから、綺麗でなくて殺風景という、妙な雰囲気を作り上げている。

 この家、万巻の書物以外にはなにもない。
会話もない。小島空の弟である航が家を出てからはなおさらである。私人としての空は、必要な時以外は決してしゃべらず、たまにある会話は、ごく事務的なものに終始していた。

 このころ、小島空の家の居候として石田咲良がいる。

 空は咲良に本を与える以外は、たまに諭す程度で、なにもしていない。それだけやっていれば十分と思っているようであった。

咲良は日々を、焼き付けられたサバイバル知識と配給食でしのいでいる。焼き固められた配給食はレンガのようで、だから咲良は、雪を溶かして湯と一緒に食べている。
小島家の冷蔵庫にアルコールが入ってない飲み物はなく、水道は通っていなかったから、咲良に雪を溶かす以外の選択肢はない。

 そんな家の中、布団と軍用の毛布2枚に包まれた咲良は隊長と谷口が大きな口で叫ぶのを聞いてびっくりして目を開けた。

 足音が近づいてくる。

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 小島空の弟である小島航は、咲良の部屋の前で腕を組んでいる。
朝食として、パンをいくつか買って来ていた。

 いつもならなんの躊躇もなく部屋に入っているところだが、前夜山口葉月から電話があり、「女の子には気を使ってくださいね」と、釘を刺されていたのであった。

山口、ひいては岩崎の言葉をないがしろにすることは(王である兄以外の誰の言うことも優しい笑顔で無視する)王子と呼ばれた小島航ですら、ためらわれた。
特に岩崎くんは恐いと、航は考えている。

 不意に戸が家屋破壊弾で吹き飛ぶような音がして、続いて谷口の声が聞こえた瞬間、航は激しく驚いた。

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 谷口が戸を吹っ飛ばした2部屋先で、小島空は炬燵に仲良く脚を入れて、鈴木ファンタジアと茶を飲んでいる。
ジャムを入れたロシアンティである。

「いいの?」
そう尋ねるファンタジアに、空は優雅に茶を飲みながら言った。髪の毛を佐藤に編ませている。
「構わん」

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 廊下に佇む小島航の前に現れたのは谷口である。
その目、その口は本気だなと航は考える。血圧があがる。

「そこをどけ、航」
「いやだ」
 航は手に持ったパンを全部捨てて上着を脱いだ。

「どけ。隊長のところにいかなければならん」
「なおのことだ」
 そう言う航の顔を見て、はじめて谷口の顔が歪んだ。泣きそうな顔。
「お前が俺に勝てるわけはないだろう」

航は、笑った。相手の言うことを全否定する時の優しい笑顔だった。
「そうだね」

 私物の拳銃を持ってないことを激しく後悔したが、
「でも、勝てないからって退くような生き方を兄さんからは習ってない。少なくともここ最近は。来い、竜馬」

 ドアの向こう、咲良の部屋で凄い音がした。
二人の男が顔を部屋に向ける。

口を開く航。
「だいたい、なんで隊長のところに行こうというんだ」
「隊長から重傷という連絡があった」

 谷口の言葉に口を小さくあける航。
二秒であわてふためいた。
「バカ、なんで言わない!」
「だから急いでいたんだ」

二人は慌ててドアを開けた。

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