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zoom RSS ボーナストラック ガンパレードオーケストラ白の章(18)

<<   作成日時 : 2006/01/24 16:06   >>

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 その日、谷口は正座していたはずだった。

 咲良が、吐いて倒れたその日の夜。谷口はふらふらと家に帰ると、明かりもつけずに正座して、そのまま長い時を過ごした。

 闇の中で谷口は、隊長は一々全く自分勝手な人だと、理性で批判しようとした。
調子が悪ければ口で言えばいい、だいたい指定の物以外を食べようとするから……

 谷口は顔をしかめる。

だが横山合わせてもその腕の中の重さは軽すぎて、それが、谷口の心をしたたかに打った。
理性より感情が全力で悔やんでいる。

何故もっと様子を見てやらなかった。何故並んで歩かなかった。もっと顔を見ていればよかった。

反省すること、大である。
正座したのは、隊長が体調悪く苦しい思いをしている時に自分が布団に入るのは、恥の上塗りのように思えたからである。

闇の中で考える。
 そもそも、眉が細いとか、まつげが長いとかが、ずるいと思う谷口。背が低いのも、駄目だった。体重が軽すぎて俺の息で飛びそうなのも、本気になれば片手で簡単に折れてしまいそうというのも、いじめとしか思えない。
 それでは。それではまるで自分の方が悪い奴ではないか。

谷口はしかめた顔からちょっと涙を流して思った。

隊長元気になってください。

そう考える。

 たまにいいことがあったからと、浮かれて隊長に寒い思いまでさせたとあっては、まったく会わせる顔がない。

明日からの迎えは航にさせよう。

そう考えた。

/*/

 このころの谷口は、姉四人から離れて念願の一人暮らしである。
 別段、筋トレしていると抱きついてきたりテスト勉強する時に限って膝の上に乗って来たりする姉達から逃れたかった訳ではない。確かに迷惑ではあったが、谷口の場合ずっとそうだったので、それをいまわしいとは、思っていない。少なくとも、ほとんどの場合は、そうである。

 それでも谷口が一人暮らしを選んだのは、自分は多分死ぬと、思っていたからである。99年の夏までの熊本の戦いで3人に1人が死んでいることを、谷口は重く受け止めていた。
航に、横山に岩崎、自分。ま、まあそれに最近増えたもう一人、最低でも誰か死ぬ計算だ。谷口は4人のいずれかを守って死ぬつもりだった。その代わりに、奴らを家に帰してやろうと、そう思っている。

いよいよ青森が戦場になるという段階で慌ただしく官舎に移ったのは、自分が急にいなくなったら、なにかにつけて自分をかまいたがる姉達が哀れと思ったからである。

 自分がいなくなった時の予行練習を、自分も、家族もするべきだと、そう思っていた。

/*/

 目を覚ましたのは7時頃である。
鼻を、何かがくすぐったからであった。

 瞬時に不覚と思い、目を全開にしてみれば谷口は布団の上で大の字になっており、次に自分の鼻の頭をくすぐる、細い指を見つめた。

 横を見た。

ラフすぎてだぶだぶのシャツから胸をはだけさせた青い髪の少年が、クスクス笑っている。
足がその、人肌で暖かいのは布団の下で大変なことがと半瞬考える谷口、次の瞬間には身体は全力で動いており、布団を跳ね飛ばして立ち上がってファイティングポーズをとった。

トランクス姿で。

 口に手をあてて笑って布団を叩く青の厚志。大きい犬みたいでかわいいなあ、もうっ。である。

まあでも。

 次の瞬間には谷口の至近、10cmから拳を振りぬく。
谷口の判断はずば抜けていて身をよじって、直撃を避けた。胸の皮膚が焼ける。

 至近で谷口の顔を冷たく観察し、青の厚志は膝で蹴り上げ腹筋ごと内臓を引きちぎるように手を動かした。谷口は足一本を犠牲にするつもりで脚を跳ね上げてガードする。

 若宮よりは上だが来須には及ばないなと考える青。ガードを軽く手で封じ、その鼻先を指で押した。

口を開く。
「勘は悪くないけど、前後不覚の眠りにおちたのはいけないね。何よりも問題は、即座に反撃しなかったことだ。その太い腕は飾りじゃないよね。なぜ振ることをためらうの?」

 口を開け閉めした後、猛然とわめきだす谷口、胸から血が滴って床に落ちた。
「それ以前に貴方は、どうやって!自分の家に入ってこんなことをしているんですか!」

笑う青。手についた谷口の血をなめる。舞のほど甘くない。
「ドアに鍵がかかってなかったら、入ってもいいと思うだろ?」
 瀬戸口の論理である。そのままにっこり笑って口を開く青。
「そうしたら座ったまま君が寝ていたから、ちょっと休んでもらおうと思ったんだ」
「自分は休もうなどとは」
「それで、誰かを守るつもりなの?」
 青はどんな人間もはっとさせるほど綺麗に微笑むと、次の瞬間盛大な拳の一撃で谷口を床に叩きつけた。 体格の差などまるで問題ならない、一撃である。

青は足の爪先で一本ずつ肋骨をノックするように叩きながら、谷口を見下ろして言った。
「君はあの子を守るつもりなら命を捨てられるんだろう。だったら他のものも捨てたほうがいい。甘さはいらない。自分への同情も」

本当なら右の肋骨は全部折られたなと思いながら口を開く谷口。
「自分への同情……など」
「自分が苦しい思いをすれば、許されると思った?」

 谷口は息をのんだ。

「やめといたほうがいい。好きってそんなに易しくはない」

青は全部の興味を失ったように、今まで着ていた谷口のシャツを脱ぎ捨てて自らの服を着始めた。
 朝日に照らされながらベルトの留め金をとめる青を見ながら、あの子って誰だろうと思いながら谷口は口を開く。

「あの、教えていただいたのはすごくありがたい気もするのですが」
「何?」
 髪をかきあげて笑う青。伸びた髪を、希望にもらったリボンで結んだ。
舞のリボンも青のリボンも、希望が見立てている。

「何故夜だったんですか」
「こっちに帰ってきたのが夜だったから」
 当たり前だろうという顔で言う青。この人物、昼を待ってなどまったく考えることがない。思えば必ず最速で動いて何が何でもどんな困難も叩き潰して実行するのが伝説の乙女たるこの人物の由縁である。しかも舞さえ絡まなければ計算高い。

 口を開く青。
「それより、いつまでそんな格好なの? 早く服を着て、エプロン。それから訓練だ」
「なんの、ですか」
「サンドイッチ。それと無添加の食べ物に関する基礎知識。一回で覚えろ」

ペンギンエプロンに袖を通しながら、青は冷たく言った。

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