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zoom RSS NOTボーナス ガンパレードオーケストラ白の章(16)

<<   作成日時 : 2006/01/21 07:51   >>

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 荷物を投げ捨てて全速で戻った谷口が見たのは、意識を失ったと見える咲良と、それを抱き、谷口を見上げて涙を流している横山である。

「あ、な……なにが」
 動揺する谷口の顔に、吐瀉物がまじった雪が投げつけられる。
横山だった。悔し涙が出た。咲良と谷口があんまり仲が良くないことにほっとしたが、それ以上に谷口の不甲斐無さに、腹を立てた。どんなに嫌な仕事だって、全力でやって欲しかった。

怒鳴る。
「貴方がついていながら、何をしているんですか! 隊長は息が止まっていたんですよ!」
「なっ……なんだと!?」
 泣きながら息を大きく吸い込む横山、咲良を抱きしめる。
「馬鹿!」

 谷口の大きな体が震えた。

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 横山に抱きかかえられ、ぐったりした咲良の肢体をみやり、谷口は顔を蒼白にしてよろめきながら近づき、膝をついた。

「た、隊長」
 恐る恐る頬を手で触れようとして、横山に跳ね飛ばされる。
にらみつける横山。にらむというよりも、瞳の炎で谷口を焼き殺してやろうかという風だった。

「触らないで!」
「触らないでって、お前」

 たとえばそれが壬生屋なら、同じ状況なら心のどこかでほっとして、後で自己嫌悪になるところである、が、横山の場合はあくまで真っ直ぐで、それ故容赦なく谷口を責めた。

「男らしくないっ、なぜ男なら隊長を守ってやらなかった!」
隊長の味方をしてやろう。横山は考える。
 それまで、石田咲良に対して小うるさくて変な人ですね以外の感想を持っていなかった横山だが、この瞬間、咲良の味方をすることを決意した。

航も谷口も、女の子を守るには大雑把すぎる。

そして自分にも腹を立てた。狭量が過ぎる。一人ぼっちの女の子の強がりに腹を立て、なぜ優しく出来なかったかとそう思った。

 横山ににらまれながら、激しく自分の愚かさを自覚する谷口。口を引き結び、肩を落とす。
「すまん」
「私に謝っても仕方がないでしょう」
「すまん。その通りだ」
 自分が隊長にコートを着せてやることも忘れていたことに気づき、谷口は涙が出そうになった。

我慢する。

泣いてもどうしようもないから体を鍛え上げたのが谷口だった。
1秒でも速く、どこかに連れて行ってやらないといけないと考える。
コートを脱ぎなががら、口を開いた。

「罰は後でいかようにも受ける。横山、隊長を渡してくれ」
「嫌です!」
「嫌って……運ばなければならんだろう」

 横山は谷口を信用していない。胃液の匂いを無視し、うめく咲良を抱きしめて、口を開いた。
「わ、私が運びます」
「運べるものか」

 咲良よりは多少体格がいいとは言え、横山も全体から見れば普通くらいの女子高生である。青森でだからこそ学兵になれた、そんな人物だった。一人をかかえてどれくらい歩けるか、まったく自信はない。
それを指摘されて、顔を赤らめる横山。

 なんと言おうかと困る3秒の内に、谷口は横山ごと咲良を抱いてコートをかぶせ、すごい勢いで坂道を登り始めた。

「ど、どこにいくんですか!」

 谷口は考えてなかった。0.5秒で答えを出した。
「距離からいって学校が近い。戻る。この時間ならまだ山口もいるはずだ」

腕の中の、もう一つ腕の中にいる咲良を見下ろし、谷口は口を開いた。

「隊長、すみません」

心の中でもう百万回あやまりながら、そして猛然と走り出した。

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