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zoom RSS NOTボーナス ガンパレードオーケストラ白の章(13)

<<   作成日時 : 2006/01/09 23:48   >>

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話は、脱線する。

 制定された兵器の多くは、なるべく親しみやすいように愛称を与えられているのが普通である。お国によっては隊内での愛称が正式名称になってしまうものもあるが、幻獣と戦う軍隊であるところの日本自衛軍は国民から広く公募される形で名称を決めることにした。
 安い人気取りであるが、まあ親しみにくい軍隊よりはちょっとでも親しみやすい軍隊のほうがいいのではないかと、毎度おなじみの時の官房長官(当時防衛省長官)が発言し、そうなった。

 そして愛称が公募された際にやはり国民(厳密にはこういうのに喜び勇んで応募するようなミリタリーマニアの国民)から多く寄せられたものが、大陸軍国であるドイツ軍の名前にあやかった猛獣の名前シリーズである。このため、日本の制定兵器、なかでも装甲車両については猫科の猛獣の名前がつけられることがまこと多かった。

 一方、装甲車両はいかつい戦車ばかりではない。戦車に随伴する装甲回収車や工作車もあれば、渡河のための架橋任務の車両や地雷源突破任務の車両、歩兵輸送任務の車両もある。旧式まで含めると種類はざっと200を超えてしまう。
 これら装甲車両群の中で最小の部類であるのが偵察装甲車である98式警戒車である。

 ちょっと大きな自動車に申し訳程度の装甲、小ぶりな砲塔に陸軍の第二標準とも言うべき25mm機関砲、40mm擲弾銃を装備した車両である。
 この小さな車両にも例によって愛称がつけられた。通例なら猫科の猛獣の名前がつけられ、まあ順序から言えばクーガーくらいが妥当だと軍関係者の誰もが思っていたが、結果は違った。
 この頃学生動員法の成立で徴兵され、急速に増えた年少の女性兵士が、よってたかってある名前をつけようと投票したのである。結果は、女性の勝ちだった。まあ面と向かって意見する女性に勝てる軍隊も国家も家庭もそんなには存在しないので、妥当なところと言うべきであろう。
 そうして決まった名前を、ミケという。 かくて自衛軍装備年鑑に愛称:ミケとかかれる装甲車が登場することになった。

 この車両、なんにつけても中途半端な能力なので本土戦前はまったくもって存在意義不明と軍事評論家から酷評された車両だったが、どこが前線かわからないくらいの混戦になった本土戦において航空偵察がおいつかなくなり、また運用戦術が研究されて適切な運用がされはじめた結果、大活躍をはじめることになる。

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「岩崎さん。スパナ取ってくださいよ」
 竹内優斗は航空学生から陸に回されてきた、まあそれだけで不幸な少年である。およそ陸軍の野粗な雰囲気とはかけ離れ、清潔で軽く、人のよさそうな、そういう感じを出している。同じ軽さでも岩崎のそれとちがって軽薄そうに見えないのが、この人物の特徴であろう。

「岩崎さーん?」
 中隊で稼動する唯一の装甲車両、98式警戒車”ミケ”の、かわいい一人用砲塔のハッチに頭を突っ込んだまま、手を虚空に伸ばす竹内。虚空を探る。スパナ、スパナと、手が言った。

 一方の岩崎は渋い顔。スパナを持ったまま耳に手を当てている。目を細める。

「もう、岩崎さん遅刻して来たんですから仕事くらいマジやってくださいよ」
 ハッチから顔を引き抜いて、車体に乗ったまま岩崎を見下ろす竹内。
岩崎は覚悟を決めたか、いつものにこやかな笑顔になった。
「いやあ。ごめんね竹内くん。僕ぁ、いつも真面目に仕事したいとは思っているんだけどね」

口を開く。
「ほんとに真面目にやってくださいよ。やればすごい能力持ってるんですから」
 竹内の本心である。この人物、どういうわけか岩崎の能力を高く評価しており、第三者から指摘されればいやな顔をしたが、この人物に心酔するところがあった。

 そんな竹内の本心を綺麗さっぱり笑顔で蹴散らす岩崎仲俊。ひどい人間である。
「いやいやいや、それは過大評価だよ。あ、いけない。実は急用があったんだ、ちょっといってくるよ」
「うわ、ちょっと!」
 投げて寄越されたスパナをおおっと、と受け取る竹内。
「早く帰ってきてくださいよ」
 本格的にいい人である。声をかけた竹内に振り向き、にこやかに笑ってみせる岩崎。

「約束するよ」
 そう言って走り去った。ちなみにこの約束が守られた例は、ない。

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 一方その頃。

瀬戸口隆之は壬生屋未央と並んで、のんびり粉雪の中を歩いている。
正確には歩く速度だけがのんびりで、瀬戸口そのものは、ひどく隣を気遣っていた。

「大丈夫か?」
「ええ。もう、この通り」

 心配そうな瀬戸口の頬に手で触れて、嬉しそうに笑う未央。
「心配しすぎです」
「結局、調子悪くしたのは原因不明だったんだ。もっとこう……」
「青を守る騎士が私につきっきりじゃ、」
「許可はとってる、それに、まあ」

 頬をかく瀬戸口。未央の見事な黒髪に、指をすきいれた。

「お前が大事だ」
瀬戸口の顔をうかがうように笑う未央。
「優男の割に、台詞が陳腐ですよ」
「そっちは廃業してる……本当に大丈夫か?」

自分の髪の毛の先をつかんで、瀬戸口の鼻の下をくすぐる未央。くすくす笑った。
「はい」
まったく青といい狩谷くんといい、この人といい、うちのはどうしてこんなに心配性なのかしら。そう思って幸せで胸が一杯になる。 瀬戸口の顔に、唇を近づける。

「やあやあやあ、お楽しみのところすみませんねぇ」

 瀬戸口は不意に現れた岩崎を殺そうとしたが、次の瞬間その手を未央にはたかれた。
ほとんど同時にジャンピング土下座している岩崎。

「本当に申し訳ない。実は少し、お願いがありまして」
「……なんだ」
 いい反応だと思いながら、赤くなった手を振る瀬戸口。そ知らぬ顔で向こうを見る未央。
岩崎は顔を少し上げる。

「青の厚志さんに、お願いしたいことがありまして」
「うちの大将か。そういや空軍の基地から広島に飛んだとか言ってたな。どんな用件だ?」
「食生活上の問題と、それについての質問なんですけどね」
「まあ、あの人は確かにその道のプロだが……」
 戦いの弟子は一人も持ってないが、料理の弟子については女の子を中心に1万という人物である。最近あの人が言う世界征服ってやつは料理教室のことじゃないかと疑っている。
難しい顔する瀬戸口。しかしその方面で急ぎの用というのはちょっと考えづらい。

「詳しく、話してみる?」
「もちろんです」
 岩崎は立ち上がりながら、にこやかに言った。
「実はうちの隊長が、ちょっと調子悪くてですね」

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