NOTボーナス ガンパレードオーケストラ白の章(12)

「あ、谷口だ」
 職員室のドアが開いた瞬間、笑ったのは咲良である。
近くで腕を組んで笑っていた空先生も、顔を向けた。

 駆け寄ってくる咲良を軽くよける谷口。いつもなら抱きとめて小言を言うはずだったが、この日は違った。

 行き過ぎてびっくりした咲良を見て、口を開く谷口。航とのやりとりの余韻か、笑ったままである。
「なにか?」

 音にならない声を出し、手をひっこめる咲良。下を見る。
「なんでもない」
 苦笑する谷口。いつもなら訳の分からない子供のようなことを言うところだ。
いつもこれくらい大人しければいいんだがと思う谷口。まあ、それは無理か。

「さ、帰りましょう。貴方が疲れて倒れる前に」
「うん……」

 いつもなら咲良の手を引くところを、隣にいた航の背を叩く谷口。
「じゃあ、航、頼んだぞ」
「そっちこそ」
 そう言って航は、咲良に笑って見せた。
「隊長、僕は警戒車の調整があるから、ちょっと残る。なるべく急いで帰るから」

 微笑ましい姿だ、兄妹のようだなぁと思う谷口。笑って航に言う。
「急げよ。俺のほうも仕事がある」
 咲良にはそれが、別の言葉に聞こえた。
「分かってる」
航の返事をきいてにやりと笑った谷口はいつもより大人しい咲良に言った。
「じゃ、行きましょうか、隊長」
そしていつもより大人しすぎるので首をかしげた。
「……隊長?」

 小さくうなずく咲良。大きな犬のことは、口に上る前に行方不明になってしまった。
「いこう」
 笑う谷口。
「はい」

/*/

帰り道。

 谷口の歩幅は大きい。
上機嫌だと特にだ。石田咲良はコートも着ずに、谷口を追って小走りになった。小さく粉雪が舞っている。

 谷口、今日は待ってくれない。

咲良は小さな違和感を自覚したあたりから、だんだん気持ちが悪くなる。
足元から嫌なものが這い上がってくる気分。

 耐え切れずにしゃがみこんだ。本当に気分が悪い。谷口は二人分の荷物を担いで鼻歌を歌いながら先に行く。咲良は我慢できずに嘔吐する。涙が出た。

 谷口が振り返って咲良がいないことに気づいたのは、二つ角を曲がってからだった。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

驚いた