電網適応アイドレスSystem4

アクセスカウンタ

zoom RSS ボーナストラック 遠い日の思い出

<<   作成日時 : 2005/12/15 17:08   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 床の間付きの座敷から見える庭の風景が、ベルカインの知る外の全ての世界だった。
今は廊下の近くに座椅子を置き、そこから外の景色を見ている。
 人は彼の境遇を憐れんでいたが、彼はそう思ってはいなかった。
春には桜が、夏には蝉の音が、秋には紅葉が、冬には雪が、彼を慰めた。
彼は咳き込むと、飽きずに庭を見はじめる。梅雨の合間の、紫陽花が咲く頃だった。

 彼に変化が生まれたのは駆け寄ってくる褐色の肌をした小さな娘を抱き上げ、優しく微笑んだ時だけだった。

 そのまま、廊下をカニ歩きで歩き、座敷に近づいてきた客人を迎える。


「調子は、いいか」
「アトドレダケ、ボクはイキラレマスカ」

 知恵者は微笑むと、真実を教えた。あと半年ちょうど。
ベルカインは深く知恵者に感謝すると、飽きてもう外に遊びに行こうとする娘の髪に、リボンを結んでやった。手を放してやる。走っていく娘。

長いことベルカインは、遠くなる娘の後姿を見て、それから口を開いた。
「アナタとトリヒキがシタイ」
「我は取引などせぬよ。だがまあ、同じ親だ、頼みは、きかんでもない」

 ベルカインは優しく微笑んだ。さらさらの髪が、風が吹いた拍子に揺れた。
「ソレデイイノデスか?」
「構わんな。貴公の協力などなくても、あの機械は解析して見せる」
 ベルカインは頭を下げると、昨日見た風景を、もう二度見ることはないと思った。
そう思えば、ここから見える風景も、とてもいとおしい。
口を開く。

「イアラを、オネガイシマス」

知恵者は、外の風景を見て口を開いた。
「よかろう。貴公の子は今日より我が子でもある。その誇りを守る守り刀とどんな男の首もとる愛の技、どんな闇の中も歩くことが出来る優しい心、世界の全部を敵に回しても己の道を行く勇気を与えよう。それで、よいか?」

 ベルカインは、うなずいた。
それが何かはわからなかったけれど、娘の幸せを信じた。

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
ボーナストラック 遠い日の思い出 電網適応アイドレスSystem4/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる