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zoom RSS 中休み GPO白の日常(1)

<<   作成日時 : 2005/12/14 03:37   >>

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 石田咲良は、一人部屋に入ると、満足気に妖精の本を読み始めた。
上機嫌。ページをめくる。少し上機嫌。ページをめくる。機嫌がいい。
ページをめくる。普通の機嫌。ページをめくる、ページをめくる、ページをめくる……

 翌日。

石田咲良、紅い瞳の下に隈をつくって、登校。
周囲の人間が恐れて近づかないほど、不機嫌だった。
髪は一部はねており、頬は膨らんでいる。

 岩崎仲俊と竹内優斗は神速で逃げ出し、渡部亜里沙と菅原乃乃恵留は、目配せして教室から脱出。村田彩華は黙って本を読み始め、吉田遥はゲーム中。横山亜美は先生の使い。

かくて教室は、石田の周囲の席に一人もおらず、残ったものもこれを無視という状況にある。

 誰もが石田咲良のとばっちりを恐れた。
この人物を怒らせると、どれだけひどい懲罰や訓練を課すかは、周囲は良く知っていた。触らぬ神に祟りなしである。

 ひどく静かな教室。

村田彩華はうっとしいと思いつつ、この状態の隊長に恐れず話しかける二人の男を思った。
一人は、小島航。もう一人は、谷口竜馬である。横山も恐れはしないが、この状態の隊長を鎮めるのは難しい。

 村田彩華、教室にいつもの大股で入ってくる谷口竜馬に気づいてナイスと考えた。
笑顔が隊長に見えないよう、顔を隠した。

 なんにも気づいてない様に、まっすぐ石田咲良の席に行く谷口。
「隊長、おはようございます」
 石田、上目遣いで谷口を見つめる。
「なにか?」
「じぃぃぃぃ」
「なんですかその表現は」
「見てるの」

 目をしばたかせる谷口。
「はあ。自分の顔を、ですか」
「うん」
 谷口、ちょっと照れる。本人としては愛想のいい、恐い笑顔を浮かべて見せる。
バカと思いながらゲーム続ける吉田遥。目線をそらす、村田彩華。

 石田咲良はカバンを置いて立ち上がり、まっすぐ谷口を見上げたまま言う。
「嘘つき」
「は?」
「お前は隊長に嘘をついた」
「自分は嘘が下手なのでつかないようにしてますが」
「弁明はそれだけか」

 かわいい声の割に、誰もが恐れる詰問だったが、谷口はまったくと言っていいほど恐れてはいなかった。それよりも谷口は石田咲良の表情を至近で見、顔を曇らせる。

 処罰を口にしようとする石田咲良の青い髪に触れる、谷口。
「隊長、すこしこちらに」
「谷口、すこしこちらってなあに?」
 怒るのより、好奇心が勝った。尋ねる石田の手を見て、手を出してくださいという谷口。
素直に両手を出す石田。優しく手袋をとってやり、机の上に置く谷口。

「ここでは話せないの意味です。こちらへ」

/*/

「谷口、なんで保健室に来るの?」
「お湯をもらう必要があります」
「なんでお湯をもらう必要があるの?」

 保健室は教室のすぐ隣である。 おい、山口はいるかと尋ねる谷口。
保健室の主、山口葉月は、はーいといって棚から物を下ろす手を休めた。少し大柄の女だが、気立てがいいと谷口は思っている。
 山口の代わりに物を下ろしてやる谷口。この行為とお湯にどんな関係があるんだろうと難しい顔で考えている石田咲良。

「なんでしょう?」
 山口は健康そうで全然保健室にはやってこない谷口と、まだ来てまもないが健康そうに見える石田咲良を交互に見て、用件を尋ねた。怪我したという風でもない。

「お湯を、少し分けてくれんか、少しだ」
「ええ。ストーブの上にやかんがありますから、そこから貰ってください」
「すまんな。さ、隊長」

 谷口は洗面器に薄くお湯を薄く注いで湯気を立てた。手を濡らし、咲良のはねている髪の毛にさわる。

「櫛をもっているといいんですが、すみません」
「これはなに?」
「髪の毛の一部がはねています」
「そうか」

 咲良はなされるがままである。器用でない谷口は苦労して髪の毛を整えてやる。
そういや山口にブラシだかを借りればよかったと思ったのは、その後である。

髪の毛が少し濡れているせいで、今の青い髪は膨らんでおらず、咲良はいつもより痩せて見えた。谷口の顔が曇る。

「食事、ちゃんととっておられますか」
「うん。三食のカロリーは予定値どおりだ」
「顔色が悪く見えます。睡眠不足ですか」

 その言葉で、咲良は自分が怒っていた事を思い出した。頬を膨らます。
「お前のせいだ」
「自分がなにか」
 谷口は不思議そう。
「お前は嘘を言った」
 咲良は恨みがましい目。
「覚えがありませんが」
 谷口は本当に不思議そう。
「妖精のことだ」
 イライラとそう言う咲良。谷口にらみつける。
「妖精は確かにすごく綺麗だった。でも私に似ていない。髪の毛が青くない。大部分の髪の色は金色だった。青は一例もない。目の色もだ。背中に透明な羽もない。なんで笑う!」
 すみませんといいながら、谷口は優しく笑った。
「妖精のようだという例えで、まったく同じじゃありませんよ」
「大きく違う」
 石田咲良は、頑迷に言った。実のところ自分が綺麗と言われて嬉しく、同時に一般名詞があるほど仲間がいると推定してさらに嬉しかったのだった。
 だが資料を見てみると明らかに自分=咲良より綺麗な女性が写っており、同時に、どうみても咲良の仲間には、見えそうもなかったのである。だから、二重の意味で腹を立てた。

 咲良の瞳が揺れることをどう思ったか、谷口は元々言い出したのは榊先生だとは言わずに、別のことを口にした。
「違っていてもいいじゃないですか。貴方が綺麗な女性なのには違いない。それで十分かと思いますが」
「本に描いてあるのはもっと綺麗だ。相対的に私は綺麗じゃない」
「自分は隊長のほうが綺麗だと思います。青い髪も、良く似合っている。航も、そう言うでしょう」
 そう言って、無断で親友を巻き込む谷口。とはいえ絶対そういうことは良く分かってるつもりだった。

しばらく考えて、顔を赤くする咲良。
「本当にそうかな」
「部下を信用してください」

 咲良は考える。
「じゃあ、谷口は虚偽報告じゃなくて事実誤認とする」
 谷口は笑った。
「懲罰はどうされますか。隊長」
 ひどく逡巡する咲良。事実誤認の場合の懲罰例は記憶に焼きついていたが、それが正しいとは思えない。だが懲罰例を破る根拠がない。結果ひどく小さな声で、咲良は罰を言い渡した。
「……う、運動場を3週」
 谷口は笑って折り目正しい敬礼すると、では言ってまいりますと駆け足で外に出て行った。

窓の外、雪の中走る谷口を見て、自分の判断は正しかったかと考える咲良。
なぜか胸が、痛かった。

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