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zoom RSS 9日目・未明 ガンパレードオーケストラ白ルート6 Dコース

<<   作成日時 : 2005/12/12 02:56   >>

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 その日の夜。
谷口は一人。2階の放送室を改造した中隊執務室で書類を前に考え事をしている。
考えは、なかなかまとまらない。

 今はビッグでない自分よりも、苦労して隊長が手袋をつけていたことを思い出す。

頭をかく。

あー、いかんいかん。

 書類に集中する。中隊の人員の考課表、すなわち成績表である。
石田が一瞬で見て判断して書いた評価と、自分が苦労して書いた評価と見比べてみる。

 違いは、あまりない。これは喜ぶべきなんだろうなと思う谷口。少なくとも隊長は自分より優秀だ。時々胸のリボンが曲がってたりするのがいけないが。無防備なところはもっといけない。自分のもみ上げを引っ張るのもダメだ。いや、そんなことはどうでもいい。

 問題なのは、どいつもこいつも成績が悪いことだ。

もとより、青森で編成された第108警護師団は弱兵である。最前線と言っていい西日本の師団と比べると、兵員一つの体格をもっても全然違う。青森生まれでも体格がいい学兵は西に送られるのだ。谷口の場合はたまたまと言っていい、その例外である。

 女性と若年者多く、文字通りの弱兵。特殊技能の拾得者も多く、戦車なんてものもない。
要するに歩兵だった。それも弱い歩兵だ。士気だって高くはない。自分の実力が分かって、死ぬ確率が高いと知ってなお勇敢な兵士は少ない。
隊長は優秀だが、体力がない。口のきき方一つにも問題があるが、まあそこは、自分が支えればいいだろう。谷口は今頃何かを抱きしめて寝ている隊長を思って微笑み、次に空先生を抱きしめているんじゃないだろうなと、そう思った。

 弱兵だ。弱兵だ。幻獣と戦ったら卵の殻を踏み潰すより簡単に皆が死んでいくだろう。
それでも訓練計画を立てなければいけない。
いや、だからこそ訓練計画を立てなければならない。

 谷口は、部隊の皆を思った。皆を家に帰したい。
親御さんの元に、もどしてやりたい。

 隊長が来られたことはいいことだ。自分が前に出ることが出来る。その分他の人間の負担を減らせる。

 ふと、谷口が気づくと、横山亜美が立っていた。盆を、抱いていた。
「どうした?」
「お茶、置きました」
 横山はなんでもぶっ飛ばすわりに、言葉遣いは丁寧だ。今は遠慮がちである。

「あ、ああ。すまんな」
 谷口は頭をかいた。隊長と違って、集中すると周りが見えなくなる。良くないことだ。部下が不安になる。茶をすする。自分が淹れたほうがうまいが、谷口は文句を言ったことがなかった。

「大変ですね」
「いや、そうでもない」
 そこまで言って、どう軽口を言って安心させられるか、谷口は途方に暮れた。
すでに一部の部隊は戦闘に入っているという。自分は悲しくなるくらい未熟だった。

横山が成績表を見ているのに気づき、谷口はあわてて隠した。

「いや、あの、そのだな」

 横山の成績は体力C、総合力C+である。白兵はともかく、体力は同年代の男子と比較するとさすがに、並みだった。

横山が笑った。

くるりと振り返り、盆を背中に回して両手に持ち、ゆっくり歩く。ゆっくり揺れる盆はウサギの尻尾のよう。

「いいんです。そんなことでは落ち込みません」
 実際横山は落ち込んでない。そりゃ確かに異種格闘技で谷口とは良く試合するし、成績は互角だったが、それは竹刀のせいと、後の半分は、谷口がすごく気を使っているのを、横山は知っている。

 谷口は下を見る。
「すまん」
「ううん。正しい評価だと思います」
「射撃の練習、弾が少ないからあまり出来てないからな」

 谷口は良く分からないなぐさめを言った。練習不足なのは全員だ。
谷口に背を向けて、どんな表情をしているか考える亜美。優しい気分になる。
思ったことを口にする。
「……でも、ちょっと嫌だな。死ぬのは。どうせ死ぬなら、何かなして死にたいな」
意訳。恋人が欲しい。

谷口は黙った後、横山を見た。
「横山」
「はい」
 亜美はあわてて振り向いた。胸の動悸が見えないように、盆を抱いた。

谷口は軽く太い右腕を突き出した。文字通り鋼のような腕、未熟は嫌だと思い続けた、谷口の努力。
谷口は腕を見やるとそれを叩き、言葉に誠意を込めた。
「お前は俺の親友だ。俺はお前を必ず守る。お前が死ぬ前に、俺は死ぬ。俺が言えるのはそれだけだ。今日はそれだけで我慢してくれ」

 亜美は泣きかけた。実際のところその言葉は初めてではなく、半年に一度くらいは亜美も岩崎も聞いていたが、亜美はその言葉が、文字通り実行されるであろうことを良く知っていた。謹厳実直の4文字をどんな宝石よりも輝かせる男が、亜美の知る谷口竜馬だった。

 亜美は顔を横に向ける。頬が赤いのが恥ずかしい。だけど嬉しいので、小さくうなずいた。
恋人でなくていい、親友でもと、そう思った。

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