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zoom RSS 7日目・夕方 ガンパレード・オーケストラ白ルート5 Dコース 

<<   作成日時 : 2005/12/10 19:11   >>

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 蛮人竜馬に対して小島王子というのが、総髪の物憂げな少年、小島航の綽名である。
この名は、主に女子生徒によって語られてきた。この一事で分かるように、彼は女性に人気がある。

 教職にある兄、小島空を大変人とすればこの人物は小変人、もしくはかろうじて変人でないとされる人物で、その差は主に人当たりによる。
 小島航は一人では物憂げだが、誰かと話すときは明るい演技が出来る男だった。とりわけ全然親しくないない人間にはそうである。人を見て行動できる分だけ、変人ではないと思われていたわけである。

 なお、彼の親しい人間、すなわち兄小島空、親友谷口竜馬、岩崎沖俊、横山亜美とも、相手が誰だろうがなんと言われようが自分のスタイルで己のやりたいことを貫く人物である。 彼がどういう基準で親しい人間を選んでいたか良く分かる逸話である。

さて、本人がどう思っていたかはさておき、周囲から見て彼が先の4人よりは組みしやすいと思われていたのは確かである。どうかすると彼は、変人と常人の橋渡しに借り出された。たとえば、おい横山、授業中にカーボン竹刀をふりまわすのはやめれ、などである。

 それでも彼が小変人と言われるのは、言い寄ってくる女にまったく興味がないことにある。
話しかけられない限り、笑うこともしなかったし、どんな恋文をもらっても、こっそり見ないことにして、捨てていた。体育用具室で迫られたときも、あわてず騒がず相手を傷つけずに交渉して脱出することに成功している。

この万里の長城を思わせる無敵のガードが、彼を変人扱いしている主たる原因であり、同時に女性人気を、ますます高めるのであった。つまり絶対振り向いてくれないということに安心してファンがついたのである。女性の心理は、複雑なのである。

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 兄から今日帰りは遅くなるからと多目的リングで連絡を受けた小島航は、今、すごい勢いで走っている。手には大きな包みを持って、滑りやすい雪の中を転倒することもなく、絶妙の体重コントロールと切れ味のいい動きで人ごみを避け、車を飛び越え、塀の上を猫と歩き、坂道を息も切らさず登っていく。ただ白い息だけが、彼を神話上の存在でないことを主張していた。

美術部で物静かな彼であったが、周囲の人間は体育会系一色である。彼らに付き合って遊ぶ分、鍛えられていた。

なにしろ竜馬と亜美はボタンが二つ以上ついているものを遊ぼうといわないのである。

 最後の階段を三段跳びで到着。今は兄と、もう一人しか住んでいない実家に帰る。

「ただいま」
 完璧に近いと岩崎が称する演技ではない、本物の嬉しそうな声と表情だった。
すぐに奥から、人が出てくる。

 半分くらい着替えた石田咲良だった。
「航だ」
咲良も、笑って見せる。ちょくちょくやってくる航はなにかにつけおみやげを持ってくるので、咲良は好きなのである。

小島航はやさしい笑顔を向けたまま取れかけているシャツを受け取るとトレーナーを着せてさらに”どてら”をきせた。変に立っている咲良の青い髪をなでて整える。手を引いてこたつのほうまで移動しはじめる。

 どんな完璧な演技を身に着けていても遠く及ばない優しいまなざしで小島航は言った。
「どれくらい一人だった?」
「少し。10分20秒くらい」
「そうか。次からもっとがんばって走らないといけないな」

 やさしく笑う航に、咲良は大きな包みが気になる様子。
航はこたつについて、そして咲良が座ったのを見て、包みをこたつの上に置いた。
「はい。プレゼント」

 咲良は瞬時に包み紙を破った。航は包み紙を回収した。
歓声。大きなペンギンの、抱き枕だった。

すぐペンギンを抱きしめにかかる咲良を見て、すごく嬉しそうに笑う航。嬉しそうではない。嬉しいのである。
彼は今、人生の中で最良の日々を過ごそうとしていた。

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