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zoom RSS 7日目・朝 Aの魔法陣による大絢爛舞踏祭 A・G共同コース

<<   作成日時 : 2005/12/10 11:42   >>

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 Aの魔法陣という。ゲームがある。
芝村系に属するゲームの中でもマイナーな、非電源系ゲームである。
ルールブックの流通量僅か1万。ムックの付録で日本国内のみの発売、ユーザー実数はおおよそ2万人という最小のグループである。

 とかく最小とよばれ、他のファンから何それと言われる団体。
だがそのユーザー・グループには一つだけ自慢があった。

 死亡率とミッション失敗率である。

芝村が開催する公式ゲーム中のプレイヤー死亡率はおおよそ20%。ミッション成功率は僅か33%。 他社同様製品と比較するとミッション成功率は3分の1、死亡率は100倍、である。この数字は世界最悪と言ってよい。

 そしてそれこそが、彼らの誇りであった。

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「アテンション!」

 ブリーフィングルームに集まったのはAの魔法陣プレイヤーグループの中でも駆けつけることに成功したプレイヤー団である。
 その数は、プレイヤー全体の数から言えば異様に多い。

「今回のミッションの説明を行う。今回はカール・T・ドランジの救出だ」

全員音もない。全員が既に情報収集していた。
Aの魔法陣というゲームでもっとも必要なものは情報収集である。
うまいプレイヤーの多くが、常に捜索レーダーを稼動させており、敵の発見については余念がない。 なにしろいつゲームがはじまるか分からないというひどいゲームなのである。

「3機の人型戦車で48機のRBと戦う」
「勝利条件は? ただ生き残るだけ?」
「3分以内の敵完全撃破。これと同時にターゲットを守る」

 ミッション・アドバーサリーの説明で顔をしかめるものはいなかった。
中にはあくびするものもいた。

「エースの出撃は禁じられている。つまりダンス・シックスは抜きだ」
 これにも反応はなかった。
別段騒ぐものもない。Aの魔法陣で騒ぐプレイヤーは、長生きできない。
ついでに言えば、エース称号を持つ人間に敬意を払うことが少ないのが、このプレイヤー・グループの伝統である。もっとも取る事が難しいのに、である。

「難易度は集計によると史上最大だそうだ」

多くが鼻で笑った。ガタガタ震えるのは初心者達だけだった。

「説明は以上。それではまずプレイヤーの選抜から入ろう」

会議が、始まった。
猶予時間は、24時間である。

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 24時間の間のプレイヤー選抜は、順調に進んだ。
ただし、票は結構割れた。Aの魔法陣のプレイグループでは別段珍しい光景ではない。
そして選抜がすむと、投票結果に関係なく、全員による取り組みが開始された。
選抜から最初から外れていたエースたちも活動を始めた。
彼らは他掲示板への連絡役や作戦協力を開始した。

選抜されたプレイヤーはいずれも歴戦の負け戦を経験しており、勝った数よりも負けた数のほうがはるかに多い人間ばかりだった。自キャラをふみこ(正確にはミュンヒハウゼン)に殺された者もいた。昔ふぬけ、ゲームのことが分かってないと言われた者もいる。
ただしそれでも、Aの魔法陣プレイヤー団は彼らと彼女らを選抜している。

 ここ一番の大勝負で選んだ選択が、それであった。

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 作戦決行までの猶予は24時間だが、絢爛舞踏祭プレイヤー団と合同作戦する関係で自ら2時間短く切り詰められた。実質猶予22時間である。
選抜プレイヤー達は全員一致であっさり貫徹を決定した。Aの魔法陣のプレイヤーの多くも、同じようなことをするだろう。使えるまでなんでもぎりぎりまで使えが彼らの金科玉条である。

 ブリーフィングルームでは20人を超える支援者達が駆けずり回った。
決行15時間前、20分だけゲームマスターと直接対話する機会があり、そこがほとんど唯一の情報収集タイミングとなった。

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 早朝、キャラクターエントリー開始。続いて行動宣言。
ダメ出し食らった時の為の待機組みを残し、撤収。予定はさらに切り詰められ、21時間で作業が終了した。

 彼らは最後まで、静かだった。

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 彼らには自慢があった。死亡率とミッション失敗率の高さである。
それは、彼らの無能を示すものではない。逆である。彼らはそれこそを誇りにしていた。絶望的状況で、よくわずかこれだけの損害で済んだという、そういう誇りであった。
多かれ少なかれ彼らにはその自信があった。限度を超えた難易度でその生死を決めるのは単なる運だ。エースと俺の違いは単なる運だと思う、誇りがあった。

失敗の数は彼らの実力とはあまり関係ない。実力があるほど絶望的高難易度がつけられるためである。だからAの魔法陣プレイヤーグループでは他人の失敗を笑う者はいない。
重要なのは失敗することではない。そこから何を学ぶかである。笑われるプレイヤーは、学ばないプレイヤーである。


 商業製品としては絶対にありえないと呼ばれる難易度。このゲームはホラーゲームかと呼ばれる難易度。

 彼らこそはゲームが人に合わせるのではなく人がゲームにあわせるという狂気のゲーム理論の実践者であった。接待的に作られたゲーム性を全部排除した、彼らはただ勝負するためだけのゲームシステムのドライバーである。

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 冒険艦 夜明けの船のパイロットピットに集合したのは3名である。

名前を
伯牙
ニンジャ
りょー
という。便宜上の名前は別にあったが、そんなものは、どうでもいい。

「アテンション!」

 ミッションアドバーサリーの声を聞いて、彼らはそこで、はじめて笑った。

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 サイレンが鳴り始めた。どこか人の心を締め付ける、それはせつない音であった。

「艦内の皆様に申し上げます。本艦はこれより最終ジャンプを終了し、第6世界域に到着します」

MAKIの声が艦内に木霊し、多くの乗員が、黙ってうなずいた。

「……降下用意!降下用意! 現在位置、ソル星系マーズ沖10万km」

「……えますか。聞こえますか?」
「きこえている。こちらも準備が、できたところだ」
徳庵教授は主席オペレーターである”さなづら”に向かってそう言った。

「整備は十分とはいえません」
 森はバインダーに挟んだチェックシートを持ったまま、おっかなびっくり、コクピットに取り付いて言った。
「大丈夫」
 パイロットの一人の、ニンジャはシートに座ったまま言った。
「こういうのには、慣れている」


 オペレーションセンターでは主席以外の全員が同型アンドロイドで構成されている。
名前をかれんちゃんと言う。
彼女達は全員が記憶を共有し、そしてともすればドライバー達を死地においやる仕事を、進んでやった。ドライバーの多くが彼女達を愛した。そして思いを胸に抱いて死んだ。

 証明が落とされ、計器類のあげる光だけに照らされるかれんちゃん。
彼女達は一斉に顔をあげると、旧式のスイッチ群を次々と跳ね上げながら一斉に報告を始めた。

「第1ウインドウ スタンドバイ」
「第2ウインドウ スタンドバイ」
「第3ウインドウ スタンドバイ」
「第4ウインドウ スタンドバイ」

 戦場へ続く500mの道が、順次ライトアップされていく。
「第5ウインドウ スタンドバイ」
「第6ウインドウ スタンドバイ」
「第7ウインドウ スタンドバイ」
「第8ウインドウ コントロールオート スタンドバイ」
 横一列に並んだ整備員達が一斉に敬礼した。

「第9ウインドウ スタンバイ」
「第10ウインドウ スタンバイ」

徳庵教授は一足先に助手の君島に日本酒を注がせて一人祝勝会をはじめていた。
杯を傾け、そして天にさし伸ばした。

「第11ウインドウ スタンドバイ」
「第12ウインドウ スタンドバイ」
「第14ウインドウ スタンドバイ」
「第15ウインドウ スタンドバイ」
「遅れました。第13ウインドウ スタンドバイ」

「全ウインドウ、 スタンドバイ」

「注意してください。セントラルが次の呼吸をするまで180秒しか時間がありません」

りょーは、目を閉じている。口だけを開いた。
「ありがとう。でも、よく知っているわ」
「残り174秒。160秒の段階で接続を開始します。シオネ・アラダのご加護を」

 エレベーターが、ゆっくりとあがり始めた。
巨大なエレベータを埋め尽くすように、3機の人型戦車が立っている。
純白の塗装に長い旗を肩に腰に下げた、式典用人型戦車である。


長い長い頭の羽飾り。
風ではためく飾り旗。
芸術品のような超長口径長の75mm砲。
七色に輝きだし、空間を透過して透明に見え出した巨大な盾。

エレベータが揺れて、止まる。

「残り166秒。"Aの魔法陣プレイヤーグループ"スタンドバイ!」
「七つの世界最後の希望を、あなたに託します。空間接続用意。最終減速開始。降下用意!」
「降下用意 時差調整トリムよし」
「降下用意 倍率ドン。2045倍速から減速開始します」
「降下用意! 沈没艦からのガイドビーコン、受信しました」
「降下用意 全準備完了」

 伯牙は他のプレイヤー達と交信するためのスイッチをいれた。
「いこうか。今は最低の状況だが、最悪というほどでもない。我々は夜には慣れている、十分ではないが準備をした。練習だけならどこよりも上だ」

3機の人型戦車が前傾姿勢になった。その瞳が青く輝きだす。
長い飾り羽根と旗が、動き始めた空気に揺れる。

ハッピーエンドまで続くはるか彼方の遠きから、ガイドライトが、次々と点灯を開始する。

赤いランプが3 2 1 と点灯する。

次の瞬間、3機の人型戦車グローリーは浮くような足遣いで一歩を踏み出した。どんでもない重量で脚部装甲が沈む。
 2秒で16km地点を突破し、5秒で180km地点を突破する。
足から火花が上がり、グローリー達は盾を構えた。

 爆発とともに出現し、3機のグローリー達は、今まさに撃墜されんとするドラケン機を守護するように現れた。世界が青から原色に変る。

「残り90秒」
 ニンジャは叫んだ。
「統制射撃戦用意!! RBだかなんだか知らないが、陸上の王者が何かを教えてやれ!」
「近接防御兵器オート、ウォーアックスフルマニュアル」
伯牙は言った。
「撃て!」

75mm砲L100という、信じられない長さの主砲(砲身7.5m)と超高速実体弾が一斉に放たれた。そのままフルオートで連射が始まる。
敵RBの絶対物理防壁の死角を突いて、そして半数の敵が脱落した。
装甲を簡単に貫通させた後、敵RBは遅れて爆発する。その上半身が、爆風で踊った。

「残り、65秒」

接近するRB達に対して75mm砲を捨てるグローリー3機。近接防御兵器を作動させながら白兵戦に移行した。

3機の連動で1機づつの敵を撃破していくグローリー。3機連携の守りで身を守り、攻撃もまた連携して行った。一糸乱れぬ統率は、何も一つの専売特許ではない。

「残り30秒」

純白の装甲を瞬く間に吹き上がる敵のオイルで真っ黒に染め上げ、グローリーがついに前進を開始する。

絶対物理防壁を約束する盾を捨てた。

直撃弾を受けながら叫び、前に進み、敵RBを両断する。

「残り6秒」

りょーが叫ぶ。
「これで……最後だ!」

 RSが放ったRB48機は数分で地上から消滅した。


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