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zoom RSS 6日目・午後 式神の城ルート(5) Cコース 

<<   作成日時 : 2005/12/09 16:21   >>

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 小夜は、ぼんやりとテラスに出された椅子に腰掛け、動きをとめている。
テーブルには、落ちた木の葉。すっかり冷め切った、紅茶。

そんなことにも、気づかない。

 その背に現れたミュンヒハウゼンは、小さく、小夜に声をかけた。

「小夜様。そろそろお食事をなされませんと」
「食べたく……ないんです」

「おやつれになられたら、光太郎様もお悲しみになります」
 小夜ははじめて、振り返ってミュンヒハウゼンを見た。
大粒の涙を流していた。

「だったらなんで姿を見せないんですか!」

ミュンヒハウゼンは深々と頭を下げた。
下を向いて、ごめんなさいという小夜。そのまま二人で黙りきり、長い間、風を受けた。

 こんなことなら人間のように扱って欲しくなかった。
小夜は思う。こんなことなら、心など、欲しくはなかった。

/*/

一方その頃。

レイカちゃんはビキニ姿で2007年の東京市にいる。

 周囲の視線は気づかない。レイカちゃんは、集中している時には周囲は見えなくなるのだった。恐ろしい集中力といえよう。どうにかすると何に集中しているのか自分で忘れるくらい集中しているときがある。

過去ってこんなに布余ってるんだー。
とか思いつつ、道を歩く。

赤いマフラーをつけた目つきの悪い猫を見つけて、わー、ネコだぁ、で走って追いかける。
指令は、この時点でかなり忘れた。

 路地裏に入る。

/*/

 路地裏にいたのはマフラーをつけたおびえる猫を抱いた、ことさら布を多く使っているような、そんな中年だった。色眼鏡をかけて、白いスーツ、帽子に、黒いコートをつけて、顔はちょっと、格好いい。
口には煙草に似せた禁煙用具。 レイカちゃんの格好を見て、ぽろりと落とした。

 猫に爪たてられながら時が止まる男。
色眼鏡を取ってこの幸運を凝視すべきか、それとも視線をずらそうか、どうしようか迷う男。

結局やったのはコートを脱いでレイカちゃんに投げて寄越したことである。どういう理由であれ、レイカが、かわいそうだという結論に達したのだった。
昔ハードボイルドだった時の癖が、抜けてない。

「いいか、どこの酒場から逃げ出してきたか分らないが、この道をまっすぐ、突き当たりに右で交番がある。そこにいけ。そこからかくまってくれる、いいな」

 こら、爪を立てるなと猫に言いながら、背を向けて歩き始める男。レイカちゃん、意味が分らない。はれー? という奴である。

 ひょっとしてこの人は可哀想な人なんじゃなかろうかと思うレイカちゃん。
心の病とか幻覚が見えるとか家庭崩壊の上に薬物に手をだすとかイヤンな想像が、レイカの心の中に湧き上がった。

 想像に貰い泣きし、男の袖を捕まえるレイカ。振り返る男。
どうでもいいが二人の心理描写だけを除くとえらい格好いいシーンである。

「あ」

立ち止まる男に、レイカは、涙を落として言った。

「頭大丈夫ですか。悪くない?」

 沈黙の10秒。

男は、抱きつくマフラー猫をおもむろに頭の上にのせると、禁煙道具を胸ポケットから出して、吸って、深呼吸した。

レイカの肩を叩く。

「そりゃお前のほうだ」

 レイカは泣きながら男に尋ねた。
「心の病、幻覚、家庭崩壊の上に薬物に手をだすとか……?」
「だからだな、そ・れ・は、ミーじゃない。いいな。ユーのことだ」

 この男、小夜の影響で最近英語のテキストをちらっと見たりしている。

「レイカちゃん普通だよ」
「自分をちゃん付けで呼ぶ普通の人間はいない」

 話すうちに、男もレイカのことがひどく悲しい存在に思えてきた。
きっと綺麗なことをいいことに、どこかのクズに薬づけにされてぼろぼろにされて、それでも人の心配をしているという想像をしたのだった。

猫が帽子の下の顔を覗き見る中、想像に貰い泣きして色眼鏡を外し、瞬間で涙を指で拭く男。優しくレイカの肩にコートをかけた。

「分った分った。俺の負けだ。ついてこい」
「どこに?」
「オレの事務所だ。コーヒーくらいは飲ませてやる」


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