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zoom RSS 6日目 深夜 ガンパレード・オーケストラ白ルート3 Dコース

<<   作成日時 : 2005/12/08 23:38   >>

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横山亜美は寒い武道場で正座している。
呼吸は深く、長く、膝につけた手は揺るがず、独特の世界を作り出している。
髪を結い上げ手ぬぐいで包んだ今は、後れ毛を見ない限り、少女というよりも、美少年という感じである。

彼女は、谷口竜馬を待っていた。

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 女子剣道部主将であった横山亜美と男子柔道部主将であった谷口竜馬の付き合いは長い。
両部とも武道館を使っており、ついでに言えば場所取りで常に犬猿の中だったのである。

ちなみに。
谷口竜馬の綽名はキングゴリラ。(または蛮人竜馬)
横山亜美の綽名は狂犬である。(またはレッドアーミー)

前者は外見だけでそう呼ばれ、後者は故あれば誰が相手でも問答無用でカーボン竹刀でぶっ飛ばすところから、そう呼ばれていた。
横山は、セクハラ教師ぶっ飛ばして大問題になった本物の凶状持ちである。

谷口竜馬が部活だけでなく生徒会の一員であったのに比較すると、横山は成績がいい割に部でも孤立気味の一匹狼、谷口が男だけにはやけに人気があって綽名で呼ばれることも多かったのに対し、横山を綽名で呼ぶものは、どんなに親しくても居なかった。誰でもぶっ飛ばされるのはいやなのである。

 横山が気安く話すのは、谷口くらいのものだった。
それも、いつもそうであるというわけではなく、横山が話すのは谷口だけが居るときである。
別段、そういう性癖があるではない。横山としてはそうでない時も話しかけたいのだが、自分が話しかけるとそれまで谷口に話しかけていた人間がすっと離れていくので、順番を待っているつもりだったのである。谷口が人気あるので、話しかけることが出来ずに一日終わってしまうことも、多かった。

 別にそれでも良かった。これまでは。

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横山亜美は寒い武道場で正座している。
呼吸は深く、長く、膝につけた手は揺るがず、独特の世界を作り出している。
ちょっと頬が冷たいが、白く見えるくらいのほうがいいと、横山は思っている。

彼女は、谷口竜馬を待っていた。

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 どんなに谷口が人気あろうと、部活をし、夜になり、武道場を閉めるころには、谷口と自分だけしかいないのが普通だった。横山はそこで、谷口と話すことが出来た。

 部活の関係で周囲からは犬猿の仲で知られる二人であったが、横山が女子剣道部主将になる前、つまりは谷口が男子柔道部主将になる前、そもそも中学1年のころから同じ場所に通って二人して最後まで残って稽古して戸締りして帰っていた仲である。

 決して仲が悪いわけではない。と、横山は思う。 思いたい。いや、たぶんそうだ。

谷口が学兵を志願すると聞いた翌日、横山も志願した。
これは、今もくやんでいない。横山にくやむところがあるとすれば、それは一つ。
学兵になって狙い通り竜馬と同じクラスになったとき、「あら、偶然ね」と言ってしまったことだった。本当はもっと別のことを言おうと思っていたのだが、驚いた谷口の顔を見て、それしか言えなかったのである。その日彼女は、千回素振りした。

 横山亜美はそんなことを考えながら寒い武道場で正座している。
呼吸は深く、長く、膝につけた手は揺るがず、独特の世界を作り出している。
ちょっと頬が冷たいが、白く見えるくらいのほうがいいと、横山は思っている。

谷口、遅い。

いらいらする横山。最近は、いつもそうだ。

 武道場の外では新任の中隊長である石田咲良が走っており、隊長ぉ、とか言いながら、谷口が追いかける。

カーボン竹刀を畳に突き立てる横山。動悸は乱れ、拳は振るえ、口からムッハーっという感じである。

 すごい勢いで立ち上がり、更衣室に走り、制服姿で戻ってきた。髪をポニーテイルにしてコートを着ると、谷口を追いかける。

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 横山が駆けつけると、谷口は除雪して積んである雪の中に頭を突っ込んでいた。

アホタレである。

 その前に石田にコート着せていたが、そんなに恥ずかしかったのだろうか。
恥ずかしいかもしれない。何しろ谷口、男にもてても女にはさっぱりである。だからこそ奥手も奥手でその辺、蝸牛の歩みよりずいぶん遅い横山でも、先取りされることもなく、なんとか親しくなれたのだった。横山にとっては絶対安全圏がいきなり大地震である。

状況に頭がついていかない。どうしていいのか分からない。口に手を当てて泣きたいが、どうやって泣くのか、横山には分からない。ずいぶん前に泣いたっきりで、中学からこっちでは谷口がいたので泣き方を忘れていたのだった。

そうだ、そう。

コートをいそいそと脱ぐ横山。

こいつもアホタレである。

雪から顔を出す谷口、横山と目が合う。
瞬きした後、口を開く谷口。

「なんだ、横山、暑いのか」

神速でぶっ飛ばされる谷口。


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