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zoom RSS NOTボーナス(5) Aの魔法陣ver3

<<   作成日時 : 2005/12/31 21:10   >>

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その錦絵は遠い遠い、昔の美談である。

 大正より前ではあるが、江戸時代というほどでもない時代。

 有明の海に竜と妖精、神族と魔族の船が流れ着いた。
竜は痩せ、妖精は汚れ、神族と魔族は息も絶え絶えであったという。

「どうしたとね」(どうしたのですか)と、漁民が尋ねると、
「帝国の皆様、我々は社稷を壊され、杜がなくなり、しかたなくあてどなく旅に出ました。東の果てに尊敬すべき国があるときいたのです。
我々を難民として亡命受け入れを認めていただけるよう、お上におつたえください」
と、お腹を空かせた猫妖精が言った。

 さて、あやしき。
されど日本橋に大まじめで四聖獣を建立していた時代である。漁民たちの年寄りのなかには、猫又と踊ったものもいた。めずらしくもあやしきもあったが、排除するほど異質でもなかったのである。
 漁民と警官はこのまれびとを寺に収容し、手厚くこれを保護したという。

その帝国は後進で弱体であったが、それゆえか、臣民には慈悲があった。ついでに山ばっかりだったので、少しばかり分け与える土地もあった。

 まれひとの保護と亡命の要請は早馬と電信ではやるもはやるわずか二日(電信。馬は途中でばてた)で、時の今上に届き、すぐさま総理大臣が閣議を招集した。

 英明なる陛下とこれを補弼する大臣達は、この哀れな者共を慈しみ、所領の一つを気前よく与えて県とした。猫の王が住む妖精郷のはずれに官費で社稷が立てられ、亡命者全員が等しく臣民として迎えられた。ついでに、これまで長らく官位を与えられていなかった猫の王にも新たに正五位の地位が与えられ、かくて多くの妖怪、化生の類が揃ってこの国の民となり、5000万の民は5800万となった。

 竜以下のまつろわぬ民、これをよろこび、これより48番目の県として、長く忠誠を誓ったのである。

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 りゅうはいいました。
ありがとうみなさん。ぼくのともだちよ。
これよりぼくはていこくのしんみんとして
もっともかんたんなほうさんじょうをまもり
もってあおぞらがおちるまで
ちがさけうみがぼくをのみこむまで
このくにをまもるゆうしゃとえいゆうたちをそだてましょう。

/*/

 海美が見たのは素裸の”いじわるめがね”である。
平然とした”いじわるめがね”へ向けた視線を上から下にやり、
顔を真っ赤にしてごめんと言ってドアを丁寧にしめる海美。
へたりこむ。

 手で、顔を隠した。

「だから言ったのに」
追いついた陸が、肩を落として言った。

「な、なにやってたのよ二人で」
 恥ずかしさとなんだかわかわない感情に泣きながら海美は言った。
海美ちゃんって、叶わぬ恋をしているんだなあと思う陸。ちょっと可哀想になる。
だから、声を少し優しくして言った。
「私はおばさんに言われて手伝い。えー、矢神くんは着替え」
「おばさんって?」
 海美の涙が、少しひっこんだ。生まれた瞬間から好きだった相手が遠くに行ったと思ったら又近寄ってきた気分。

 陸は優しい。手を差し出して、海美を起こそうとした。
「矢神くんの、おかあさん」
ドアが開いた。姿を現した”いじわるめがね”は、ため息一つ。

「なに?」
と言った。

 海美は、”いじわるめがね”の顔をまともに見れない。声も、まともにはでなかった。
「か、かばんないと明日、困るから」
「それで土足で歩いてきたり覗きをしたりしたんだ」

海美、泣きそう。またいじめられた。

 陸は海美の顔を見て可哀想になり、かばってやることにする。
「さ、えー、矢神くん、あんまり怒らないでも」
「怒ってはいない」
 というよりも”いじわるめがね”はそもそも海美には興味なさそうだった。この言葉も、単に事実を確認したに過ぎない。

言葉の響きに、さらにいじめられたと思う海美。

「かばんは部屋にある。勝手にもっていけばいい」
「せ、折角だから遊んで行ったら?」
 陸の発言に、陸を見る”いじわるめがね”。発作的に平伏しようとして、耐える陸。
罰が過ぎますと目で訴える。”いじわるめがね”は目をそらした。

「許す。よきにはからえ」
 頭を下げる陸。海美が意味不明という面持ちで顔をあげるのを手で引っ張り、背を押して、”いじわるめがね”の部屋にいれた。

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