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zoom RSS NOTボーナス(3) Aの魔法陣Ver3

<<   作成日時 : 2005/12/28 11:38   >>

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 天には時の光を編んだ大河があり、物事を二つに割っている。
即ち不思議の側と理(ことわり)の側である。

古来、大河は、それぞれの岸辺から、理の側の大河と不思議の側の大河という名前で呼ばれている。

 猫も人も、その大河の、ことわりの側の岸辺に住む生き物である。
不思議の側には猫も人もいない。居ないことになっている。そこに住むのは、猫や人の形をしても猫や人ではなく、別の生き物ということになっている。これを妖精と言う。

 妖精の中でもっとも有名なものを英雄妖精と言う。通常は妖精を廃して英雄族と呼んだ。
英雄妖精は妖精の中でも特別で、時折不思議の側の大河を渡り、理の側の大河のほとりを荒らす悪しき妖精と戦うことで知られている。

 古い古い伝説に従えば、英雄妖精はもとは理の側の生き物だったという話だ。
だから不思議の側に行ったその後も、理の側を懐かしみ、それを守るのだと言う。


 不思議の側に渡った猫を、紅葉という。銀の毛と縞の痩せた猫だ。
古来何十もの仔をなして、その仔がまた大きな大きな猫に育つものだから、既にして理の側の大河を渡ろうとしていた猫だった。

 この猫は仔猫の時、においに釣られたか魚屋に迷い込んだところを、魚屋の主人が見かけて往生し、良く魚を飼いに来る猫屋敷の主人に、鯖一本とともに託したという。
 魚屋の主人は鯖一本の損をしたが、良心を守った。
まったく魚屋であっても守るべきは鯖ではないという、これはそういう話である。

 猫屋敷の主人、その博学な事から知恵者と号される。
知恵者、その猫に紅葉と名をつける。草木から名前を借り受けてつけたのは、その猫が赤にまつわるなにかを持っていたからではなく、命が細くて秋までもたないと見立てたからである。

もう忘れられた頃の昔から、危ない時を見越してその時に盛んな名前を借り受けて災いを避けるという術があったのである。

既にして魔術の時代はとうの昔に終わっていたが、知恵者はそれでも、名前の魔術を行使したのであった。
そののち、看病をすることにした。日々を過ごすことにしたのである。

魔術が効いたとは誰も思わないが、紅葉は、秋を越えて成猫となった。
以降10年、良く命を長くし、理の側の大河を渡った後、名前を返した。

 猫屋敷の主人、これまでの年月をもって草木の紅葉に深く謝し、新しい紅葉の苗木11本を神仏に奉納し、もってまたいつかの助力をお願い申し上げた。


 以降。猫屋敷の主人、時折猫の形をした英雄妖精を見るという。

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 元斉一郎は眼鏡を取るとゆったりとして豪奢な刺繍が入った県令の官服に着替え、禊をし、長い髪をきちんと編んで、冠をかぶり、執務の後の読書を楽しんでいた。

 姿勢を正し、書見台に本を置いて本を読んでいたのである。
書見台とは本を立てて読むための道具である。時折、膝の上においた手を上げてはページをめくった。

 見入る。そしてまた、ページをめくる。

いまどき流行らない、4畳半の子供部屋のことである。寝台は今、立ててあった。

 その傍にはべるのは斉一郎の股肱の臣、名前を坂東陸という。歳は十、少々尖り気味の耳と金髪が見事な、大日本帝国臣民森林妖精族美少女だが今は便宜上の都合でGパンにトレーナーを着、その上からにゃんにゃんエプロンをつけていた。 髪は耳を隠すように左右にわけてリボンで結わえてある。

 さらに目を移せば、足をきちんと揃えた5、6の猫がいた。彼岸も押し迫ったので、挨拶をしにきた猫たちであった。今期の勇者徴募官の役目を果たし、故郷へ帰るのである。
元斉一郎は彼ら勇敢な勇者徴募官達の働きをねぎらい、小皿に海獣の乳を盛って、賜った。

 そのうちの一匹、銀の毛と縞の痩せた猫が懐かしそうに本を読んでいる。
元斉一郎は本をめくる手を休めると、猫に口を開いた。
「猫よ、そこの本にある魔術師をご存知か」

銀の毛と縞の痩せた猫は深々と頭を下げた。大きくうなずく元斉一郎。
「僕もいずれもこのような方を配下に迎えたいものだ」

それは本心と言うよりも、優しい心遣いというものであった。日40円の俸禄の元斉一郎に人を雇う財などない。それでも猫は心遣いに頭を下げてこれを謝し、涙を落とした。

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