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zoom RSS ボーナストラック <海法戦記>

<<   作成日時 : 2005/12/20 00:47   >>

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 海法は、光太郎を担いでようやく事務所まで帰ってきた。
文筆業にはつらい距離だった。肩で息をしている。
いや、しかし。これはダイエットにはいいかも知れない。

背負った光太郎をにらむ。

 ああ、コイツが美女だったら。美女だったら! ステキダイエットと思い込むことも出来たのに!出来たのに!

訳の分からない叫びをあげる海法。
叫ばなければもう少し早く帰ることができた。

「ちょっと」
「あー!?」

 背中から声をかけられて逆切れする海法。
海法はすごむとイッちゃってる人特有の凄みがある。大概の人はやられると本当に思うらしい。が、しかしこの場合は相手に効いてなかった。
相手は、三つ編みメイド姿の堀内ゆかりである。背中に、巨大な棺桶を担いでいる。
汗だく。

 ゆかりの顔を見て、激しく動揺する海法。顔が蒼白になる。

「いいから、どいて」

 ゆかりは疲労で何も考えたくない。短く、そう海法に明示する。
避ける海法。事務所のドアを叩き出すゆかり。

「こんちわー。お届け物ですぅ」

海法。光太郎のポケットから鍵を取り出した。
ドアを開ける。

「どうぞ」
「ここの人なら、最初にあけてよ」

 ひどい言い方だと海法は思うが、何も言い返せない。
自分の顔を見て一瞬で目をそらしたゆかりの近くに居るのが、悲しかった。

「さあ、光太郎くん、起きたまえ。家だよ、家」
「……聞こえてるよ、バカよけ作家」
 海法は光太郎の声など聞いていなかった。目も、耳も、別のほうを向いている。

 重い棺桶を置いて、棺桶の上に股を大きく開いて座り込み、肩で息をするゆかり。
海法はいつかそうしたようにあわてて冷蔵庫を勝手に開けて麦茶を持ってきた。

 ひったくるようにして麦茶の入ったコップを取るゆかり。一口で飲んだ。いい気分。
「うめー!」
「うまいでしょうが。さもなければおいしい。股も広げすぎですよ。裾もめくれている。暑いのはいい、でも無用心過ぎだ」
「うるさいなぁもう。アンタ、何様?」

 ひどく傷ついた顔の海法を見て、ゆかり、海法をまじまじと見る。

「……どこかで、逢ったっけ?」
 長い沈黙。
親に死ねと言われた幼子のように、口を開く海法。
「いいえ」
ゆかり、ポケットからレースのハンカチを取り出して汗をぬぐう。ハンカチで表情を隠す。考える。ハンカチをたたみながら、海法を観察する。

「なんでそんな顔してるの? 私、何か悪いこと言った?」
「なにも。そう、光太郎君、おだいじに。たぶんすぐにでもロイ君が君を看病に来るだろう。それと今度のようなことはしないことだ。彼らが残した穴は僕がふさがせて貰った」
「私と話をしてるんでしょ。ねえ、なんで目を反らすの!?」
海法に向かって手を伸ばしたゆかりを、海法は反射的に振り払った。
手を打たれて驚いた顔のゆかりと、その何百倍も傷ついた表情の海法。

「失礼する」

海法はそれだけ言うと、そそくさと歩き出し、事務所を出た。

/*/

 あっけにとられたのはゆかりである。閉まったドアを見て、光太郎を見て、その後立ち上がり、地団駄を踏んだ。
「な、何よあいつ! 何様仏様それとも神様!?」
「よけ作家だよ」

 光太郎の声を、ゆかりは聞いてない。顔を真っ赤にしてコンパクトを取り出し、自分の顔が相変わらずかわいいことを確認した。口元はちょっと引き締まってるけど!

「む、ムカツクー!」

コンパクトを閉じて、思わず声が漏れた。

/*/

 涙もぬぐわずに走るように歩く海法の前30mの距離に、サイドカーをとめた一人の執事が立っている。
今は加齢メイクも解け、若々しい。

「早かったな。よけ作家」
「お前か、Aのような嫌がらせをした者は」
 海法は万年筆をくるくる回している。光り始める万年筆。
笑う万能執事ミュンヒハウゼン。
「やる気か。ぼーや」
 低レベルの挑発だと海法の理性は思ったが、感情は全然違うことを言った。
「やってやるさ、この糞悪魔。ここいら全部火の海にしてやる」
「はじめからやり直せばいいじゃないか」
「僕の知っているゆかり嬢はもっと可憐だった。同じ顔をしているがあんなものは、別の物だ」
「俺から見るとまったくおんなじだがね」
 海法の目に炎が宿った。
「黙れ! 本気で殺してやるぞ。バラバラにしてセントラルに投げ込んでやる」
「面白い!」

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